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すれ違う 4

明るい時間に外に出て、ナギが一人で小さい子供と遊ぶ姿なんて想像が出来ない。 蓮の思いがけない申し出にナギの顔がぱぁっと華やぐ。 「い、いいの? でも、忙しくない?」 「暇で仕方なくって、ランニングでもしようかと思ってただけだから」 「そう、なんだ……」 何処か嬉しそうな表情をされたら、こっちまでなんだか嬉しくなってくる。 だだっ広い公園には沢山の遊具があり、冬休みに入ったばかりの子連れ客で賑わっていた。 大きなアスレチック内には沢山の子供たちがおり、ナギの弟はナギの手から離れてその中へと突進していく。 弟君がどこに居るのかを目で追いつつ、蓮はナギと連れ立って巨大遊具が見える位置に備え付けてあるベンチに揃って腰を降ろした。 中に入った弟君は楽しそうに、滑り台を滑ってみたり、不安定なつり橋状の遊具の上を渡ったり、アスレチックを登ったりと一人で遊んでいる。 時折こちらをチラチラ見ては手を振って存在をアピールしてくる姿が何とも微笑ましい。 「まさかフラれた理由が、弟の面倒を見るから。だなんて思わなかったよ。お陰でクリぼっちになる所だった」 冗談めかしてそう言えば、ナギは気まずそうに視線を彷徨わせた後、ごめんと小さく謝った。 「……俺の母さん、俺が小さい時に離婚しててさ。4年前に今の父さんと再婚したんだ。あの子海斗って言うんだけど、俺とは半分血が繋がってる。育てて貰った恩もあるし、たまには母さんも子育てから離れて息抜きしたいだろうし、だから時々こうやって預かってるんだ」 まさかこうして、ナギの家族の話を聞く時が来るなんて思わなかった。 彼の口から語られる、まだ自分が一度も聞いたことのなかった過去。

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