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すれ違う 5

ほんの少し、彼のプライベートに触れられた気がして、なんだかくすぐったい気持ちになる。 「でもさ、俺の都合も聞かずに自分だけクリスマス満喫するのってちょっと狡いよな」 俺だって、お兄さんと二人っきりでクリスマスを過ごしたかったのに。なんて言いながらするりと肩に凭れ掛かって来て、ドキリと心臓が跳ねる。 そのまま甘えるような仕草で太腿をするりと撫でられて、思わず身体を固くした。 「……っ」 コイツは、わざと煽っているのか? こんな、子供たちや人目がある場所でなんて事を。 「ほ、ほらっ! 海斗君が手を振ってるよ。一緒に行って遊んであげなよ」 「……お兄さんは何処にもいかない?」 捨てられた子犬のような目をしてそんな風に言われたら、ノーとは言えない。 そもそも、何処にも行く気なんて無いのだけれど。 「行かないよ。此処に居る」 どうせ今日は何の用事も入れていないし、此処まで来てハイさよなら。なんて寂しい事は流石にしたく無い。 苦笑しつつそう言えば、ナギは嬉しそうに破顔して海斗が居る滑り台へと走って行った。 彼の後ろ姿を見つめながら、蓮は大きく溜息を一つ吐いた後、項垂れた状態でガシガシと頭を掻く。 「はぁー、心臓に悪い」 と言うか、身体に悪い。会えないと思っていた分、気持ちが高揚して浮かれていたのか、完全に油断していた。 さっきのが、わざとか天然なのかはわからないが、不意打ちで可愛い事をするものだからタチが悪い。 「お兄さーん」 とびっきりの笑顔で、巨大な滑り台の上から海斗と一緒になって手を振ってくるナギは、無邪気そのものだ。 「あーもう……」 なんなんだ、あの可愛さ。無意識だとしたらタチが悪すぎる。 蓮は手で顔を覆いつつ、ニヤけそうになる顔を必死で押さえた。

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