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すれ違う 6

ナギたちがアスレチックへと向かって5分もすれば、彼の正体に気付いた親子連れがチラチラとそちらに視線を向け、何やら小声で話し込み始めるのが目立ち始めた。アスレチック内から、ナギたちの様子を盗み見ている母親らしき人達もチラリと視界に入る。 「ねぇねぇ、今の見た?」 「見た見た! あれ、ナギ君じゃない?」 「可愛い~、顔ちっさい! 子供連れてるけど、誰の子かな?」 そんなヒソヒソ声がこちらにまで響いて来る。 今、此処にいる子連れ夫婦の多くは獅子レンジャーをリアルタイムで見ている世代だ。帽子を被る程度では、正体がバレるのは時間の問題だろう。 案の定、あれよあれよという間に二人の周りには人集りが出来始め、キャアキャアと黄色い声が飛び交うのが遠目からでも確認できた。 「やっばい、ナギ君可愛い」 「なんかいい匂いするー」 「テレビで観るより、実物の方が数倍可愛いんですけど!」 そんな声が飛び交うのを少し遠くで見つめながら、蓮は何処か誇らしげな気持ちで鼻を擦る。 そう、そうだろう。ナギは可愛いんだ。 二人きりの時はもっと可愛い……。 内心満更でもない様子でフフンと鼻を鳴らしていると、不意に頭上に影が差した。 「あのっ……御堂、蓮さん……ですよね?」 見上げると、いかにも清楚系女子と言う言葉が似合いそうな女性が、生後間もない赤ちゃんを抱っこひもであやしながら、少し恥ずかしそうに声を掛けてきた。 「っ、は、はぁ……」 「やっぱり! 獅子レンジャーチャンネル、毎日観てます!! 私、蓮さん推しなんです! この間の女装、凄く素敵でした!」 「……ハハッ」 キラキラとした目で女装を褒められてもあまり嬉しくは無いが、一応それは笑顔で受け取っておく。 「蓮さんカッコいいですよね。ナギ君は可愛いけど、二人ともイケメンで大好きです。握手して貰ってもいいですか?」 まさか自分がこんな風に声を掛けられるとは思っていなかったが、無下には出来ない。 蓮は、笑顔を作って、握手の為の右手を差し出した。すると、それを皮切りに蓮の周りにも人が集まって来る。 何だかまずい事になって来た。このままナギと合流できなかったら困る。早急にこの状況を何とかしなければ。 そんなことを考えていると、不意に頬に冷たい雫が滴った。視線を上げるといつの間にか空がどんより暗く、分厚い雲が上空を覆い始めている事に気付く。

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