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すれ違う 7
「あ、雨……」
誰かがそう呟く声が聞こえ、暗い空から糸のような雨が、静かに降り注いで来た。
蓮たちの周囲に集まっていた主婦たちも冷たい雨から我が子を守ろうと蜘蛛の子を蹴散らすように、慌てて各々の乗って来た車や、雨宿りできる場所へと散り散りに走り出す。
蓮もナギと合流しようと立ち上がったその瞬間、
「チッ。急に降り出すなんて聞いてねぇぞ。クソッ」
よく聞き覚えのある声が耳に響いて来て、蓮はハッとそちらに視線を向けた。
「おいコラ、颯斗。ちゃんと掴まっとけ! 落ちるんじゃねぇぞ!」
黒髪ツーブロックなんて今時珍しくもなんともない。だけど、その背中は明らかに見覚えがある。
どうして、こんな所に? 見間違いだろうか? いや、でも……。
胸がざわつき、心臓の鼓動が煩いくらいに早くなる。あれは……。
「――……」
思わず後を追いそうになりかけたその時。
「お兄さん、何やってるの? 早く、こっち! 濡れちゃうよ」
海斗君を抱っこしたナギのよく通る声に我に返り慌ててそちらに向き直る。
「ごめん。今行く」
頭を過るのは、あの後ろ姿。
まさか、そんなはずは無い。きっと、他人の空似だ。彼は独身だし子供がいるわけがない。
そう思いながらも、蓮はどこか落ち着かない気持ちでナギの待つ遊具の下へと走って行った。
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