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初対面 10
「兄ちゃん」
耳に馴染みのない、高い声が聞こえた。
蓮の意識がゆっくりと戻って来る。
「兄ちゃん、起きて」
夢うつつに聞いていた蓮は、一気に目が覚めた。瞼を開くと視界いっぱいにナギの顔が飛び込んでくる。
一瞬状況が読めずに、ギョッとして僅かに身を引いた。
すぐに昨夜のことを思い出し、あどけない寝顔に可愛いなと目を細める。
だが同時に、ヤバいと背中に嫌な汗が伝った。今、ナギの身体を揺すって起こそうとしているのは弟の海斗だ。
蓮は上掛けの中で息を顰めた。顔半分は布団に埋まっているし、ナギの身体で遮られていて恐らく自分の存在に海斗は気付いていない。
「ん……、いま、なんじ?」
「朝だよ、起きてよ~。おしっこ洩れちゃうう」
情けない声を上げながら、海斗がモジモジと足を擦り合わせている。
「んー、先にトイレ行って来なよ」
「やだぁ、一緒に来てよぉ」
「わかった。わかったから……ちょっと待って」
海斗は甘えてナギに擦り寄るが、ナギは眠いのか眠い目を擦って億劫そうに起き上がると、ようやくそこで蓮の存在に気付いたのかハッと息を飲んだ。
「あ、えっと……おはよ」
「……っおはよ。それより、早くトイレ連れて行ってあげたら?」
どこかぎこちなく告げた蓮に、ナギは戸惑ったような表情を浮かべた後、コクリと頷いた。
「海斗、ちょ、ちょっとだけ待ってて! 後ろ向いて10数えて!」
「やだぁ、洩れちゃうよぉ」
「っ、わ、わかったよ……っ」
焦ったような声を出し、ナギは海斗を小脇に抱えるとベッドの側に落ちていたズボンと下着を拾い上げてバタバタと走って行く。
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