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初対面12

結局その後、そろそろ帰ろうかというタイミングで、クリスマスを堪能して帰宅したナギのご両親との初対面することになり、元々蓮のファンだったらしい母親にサインを求められ、蓮はなんとなく居た堪れないような申し訳ないような戸惑いが混じった気持ちを抱えながらペンを取ることになった。 もう少し話が聞きたいと言う母親の強い希望もあって、断り切れずに夕飯を一緒に食べ、もう一泊する羽目になってしまった。 「ごめんね、お兄さん。母さん強引な所があってさ」 「いや、それはいいんだ。けど、二晩も泊めて貰っちゃってよかったのかな?」 順番に風呂に入り、ナギの部屋に客用の布団迄準備してもらって、ようやく一息ついた頃には随分と夜も更けてしまった。 ベッドを背もたれ代わりにして並んで座りながら互いの指を絡めて手を繋ぐ。 今日一日沢山彼の母親や、再婚相手だと言う父親と話をしたが、流石に現在付き合っていると言う事実だけは言えずに誤魔化した。 「いいんだよ。俺も、お兄さんと一緒に居たかったし……」 コテンと蓮の肩に頭を預けて来る仕草が可愛くて仕方がない。 「……っ、そう言う可愛い事言われると、辛いものがあるな……」 「へ? って、さ、流石に今夜は駄目だからね!? 何考えてるんだよ……っ」 真っ赤になって慌てるナギに、蓮はクスクスと笑ってその身体をそっと抱きしめた。 「大丈夫だよ。流石にご両親がすぐ側に居るんだから、しないって。あぁ、でも……キス位はいいだろ?」 耳元に囁きながら、くいっと顎を持ち上げ視線が絡む。 「……っ、キス……だけ……だからね?」 ナギは一瞬だけ息を飲んだが、すぐに小さく頷いてぎゅっと目を閉じた。

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