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小さな亀裂2

「なぁんか、大人って色々面倒くさそーだな」 そんな4人の後ろをついて歩きながら、黙ってやり取りを見ていた東海が呆れたような声をだし、その隣にいる美月がウンウンと神妙な顔で頷くと、すぐさま弓弦がそちらに視線を投げかけた。 「それは聞き捨てなりません。私はまだ未成年なのに……」 「フハッ、天下の草薙弓弦はそんな細かい事気にするんだ?」 ムッとした表情を浮かべ、弓弦が言い返すと東海はククッとおかしそうに笑った。 「気にしますよ。そりゃ……あの二人と同類には見られなくない」 「やっぱり何気にディスられてるよね!?」 弓弦がジトッと責めるような視線を向けて来るので、蓮は心外だとばかりに声を上げ、ナギは少し困ったように眉を顰める。 「あーもー、なんでゆづはそんなに突っかかっていくのよ?」 「……別に」 姉である美月の問いかけに、弓弦は何処か困惑したような表情を浮かべた後、拗ねたように顔を逸らした。 一体、なんだと言うのだろうか? 「……ねぇ、ゆきりん。クリスマスに結弦と何かあった?」 「うぇっ!? な、なにっ!? 急に……っ!?」 突然ナギから話題を振られ、雪之丞がびくりと派手に肩をすくませる。 「えー、だって、弓弦が機嫌悪い理由、ゆきりんくらいしか思いつかないし さぁ」 「っ、な、何言ってるんですかっ! 棗さんは何も関係ないでしょう!?」 ナギの言葉にすぐさま反応したのは弓弦だった。何か焦ったように否定する姿を見つめ、雪之丞は困ったように視線を彷徨わせる。 「何慌ててるんだよ、ウケる」 「っ、別に慌ててませんって!  私は別に……っ関係ない棗さんを巻き込みたくないだけで……これは、私自身の問題だから……っ」 モゴモゴと口籠り、弓弦はそう言いながらギュッと胸の辺りを押さえた。 「なんか、モヤモヤすんな……」 「まぁ、辛気臭い話はもう止めにしましょ。ゆづにも色々思う事があるんだろうし! そんな事より! 公式動画見た? 再生数随分伸びて来たのよ!」 美月がポンポンと弓弦の肩を叩きながら、わざとらしく明るい声を上げ、空気を変えるように、ふふん、と得意げに笑みを浮かべた。

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