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小さな亀裂 8
「なに? ボク、可笑しなこと言った?」
「い、いや……。雪之丞の口からそんな過激な言葉が出るなんて思って無くて……」
「そうかな? ボクだってムカつくって思う事位あるよ」
「そ、そうか……」
意外過ぎる雪之丞の過激発言に動揺を隠せない。
「でもさ、ゆきりん。あの二人のゴシップ写真なんて持ってんの?」
「ぅっ、そ、それは……ッ、持ってない……けど……ッ」
「じゃぁ駄目じゃん」
「そ、そう……だよね……」
キッパリとナギに否定され、さっきまでの勢いは何処に行ったのか。雪之丞がシュンと肩を落とす。
確かに、あの二人のゴシップ写真なんてそうそう手に入らなさそうだ。だが、元々業界内ではあまりいい噂を聞かない二人でもある。
「……僕は、雪之丞の意見に賛成かな。叩けば埃が出て来そうじゃないか。あの二人……」
今、ドラゴンライダーは飛ぶ鳥を落とすような勢いで視聴率が伸びて来ており、云わばナギたち獅子レンジャーの目の上のたん瘤のような存在になりつつあるのは確かだ。
メンバーを馬鹿にされた状態のまま、視聴率まで自分たちの上だなんて気分的によろしくない。
「馬鹿ね。アンタたち! そんな事して勝ち取った勝利なんて本当に嬉しい? 折角此処まで頑張って来たんじゃない。だったら、下手な運頼みとか小細工なんてしないで、正々堂々アクションとストーリーで視聴率もぎ取ってやりましょ! さっきも言ったけど、みんなの動画の評判すっごくいいのよ。視聴率だって安定して来てるし……。何も心配要らないわよ」
蓮の言葉を遮るようにして、美月が不敵に笑いながら言い放つ。
「アタシなら大丈夫。あんな高飛車女なんかに負けないんだから!」
「――何をもって、勝ちとするか。だな」
グッと拳を握りしめ、意気込む美月の言葉に重なるようにして、不意に低く冷たい声が響く。
声のした方を見やれば、凛が眉間に深い皺を寄せて立っていた。
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