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OFFの日

それから数週間、何事もなく順調に撮影は進んでいった。1月下旬にしては寒さが緩み、比較的暖かい日が目立ったのも、良い方向に作用したのだろう。 地方ロケの合間に周辺の遊園地や動物園でのヒーローショーをこなし、動画の反響も上々。 視聴率こそ莉音達率いるドラゴンライダーと拮抗しているものの、数々の困難を乗り越えて来たとは思えない程順調に獅子レンジャーの撮影は進んでいった。 「えっ!?」 そんなある日、撮影を終えて次のスケジュール確認の為に会議室に集まっていたメンバーが、凛から唐突に発表された「明日は完全オフ」宣言に、驚愕の声を上げた。 此処までスケジュールをぎっちりと詰め込まれていただけあって、突然のオフはかなり嬉しいサプライズだが、あまりにも突然過ぎて頭が付いて行かない。 勿論、嬉しいけれど……。 その場に居たメンバー全員が呆然としながら、お互いの顔を見合わせる。 「此処までみんなほとんど休みなしで頑張ってくれていたからな。撮影本数もある程度の余裕が出来たし、久しぶりの完全オフだ。ゆっくり羽を伸ばしてくれ」 「たく、兄さんはいつも唐突なんだから……」 オフにするならもう少し早めに言ってくれても良かったのにとは思うが、兄らしいと言えば兄らしい。 そもそも、兄は昔から肝心な事はギリギリまで言わなかったりする事が多い。 決して意地悪でそうしているわけではないと、長い付き合いの蓮は理解しているが、周りからはどうも誤解されがちだ。 ナギたちも最近になってようやく凛の無茶ぶりにも慣れてきたようだが、最初の頃などは反発もそれなりにしていた。 「まぁでも、久しぶりのオフかぁ。なにしよっかな」 「……」 ナギは一緒に過ごしたいと言ったら引くだろうか? 不意に頭の中に浮かんだ願い。  一緒に過ごしたい、というか……ただ単にデートに誘いたい。 久しぶりの完全オフなのだ。ほぼ毎日撮影や色々な事で顔を合わせているから、流石にそれは無理だろうか? もしかしたらたまには一人でゆっくりと過ごしたいかもしれないし……。 でも……。 頭の中でそんな事を考え、視線をさ迷わせていると、後ろから弓弦がクイッと蓮の服の袖を引いた。 「……あの……。もしよかったらコレ」 「?」 そっとポケットに何かをねじ込むとそそくさと去っていく弓弦の姿に首を傾げる。 不思議に思いながらポケットを探るとそこには一通の封筒が入っていた。 一体何だろう? と疑問に思いながら中を覗き込むと、そこには映画のチケットが入っていた。 しかも二枚……。 よくよく見てみれば、主演の所に草薙弓弦と言う文字が印字してある。恋愛をテーマにした映画を数々HITさせて来た監督が贈る期待の新作と、ここ最近巷で話題になっている人気作品だ。 「えっ、コレ……っ」 これは、もしかしなくてもナギと映画デートをしろと言う事なのだろうか? と、若干混乱しながら蓮が弓弦の背中を目で追うと、ほんの一瞬だけ弓弦が振り返り、何かを言うように口をパクパクと動かした。 そして直ぐにプイッと顔を背けるとそのまま立ち去ってしまう。 (ナギと映画に行けって事、だよな……) 全く、高校生のクセに生意気な真似をしてくれる。

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