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OFFの日 5

待つ事約15分。ナギが身支度を終えた。クシャクシャだった髪はセットされカジュアルなハーフコートにざっくりとした網目のマフラー、タイトなジーンズ。ラフないでたちなのに背が高くてスタイルもいいから何を着てもカッコよく見える。 何時もの小悪魔モードも可愛くてちょっと幼く見える彼も中々捨てがたいが、こうして年相応のカッコよさを見せつけられると、本当に年下なのだろうか? と不思議に思ってしまう。 「どしたの?」 「いや、何でも」 蓮がジッと見ている事に気付いたのか、ナギが怪訝そうに振り返った。慌てて何でもない風を装う蓮だったが、やはり隠しきれなかったようで、ナギはふっと笑う。 「まぁいいや。準備もできたし行こ」 「あぁ、そうだね。でも、その前に……」 玄関で靴を履いて、こちらをナギが振り返ったタイミングで頭を引き寄せチュッと軽く唇を触れ合わせる。 「……なっ、なに」 「んー、なんとなく? キスしたくなったから」 「……ッばかっ!」 不意打ちには相変わらず弱いらしい。じわじわと赤くなる頬を誤魔化すようにドアの向こうに消えて行ったナギの後姿に可笑しさが込み上げて来て、ククッと忍び笑いを洩らしながら蓮も慌ててナギの後を追いかけた。 日差しは届いてはいるものの空気は肌を刺すように冷たい。 「やっぱ寒いね」 「そりゃ、冬だもん。仕方ないよ」 言いながら、ナギの腕を掴んで握り自分のポケットの中へ一緒に引き込む。 「ちょ、ここ、外だよ?」 「誰もいないから大丈夫」 「そう言う問題じゃ……」 口を尖らせてブツブツと文句を言いつつもポケットの中で繋いだ手を離そうとしないのは多少なりとも嬉しいから、と言う事だろうか? 繋いだ手に少し力を込めてやると、ナギは俯いてコツンと頭を蓮の胸元にくっつけてきた。 「素直じゃないなぁ」 「……うっさい」 素直になれないところも可愛いと思えるのだから、自分は本当にナギが好きなんだなぁ。と、しみじみ思う。 「今日は沢山楽しもう」 「……うん」 こんなにも心躍る休日はどのくらいぶりだろう? むしろ、初めてかもしれない。 こんな機会を与えてくれた兄と、映画デートのお膳立てしてくれた弓弦にはいくら感謝したってしたりない位だ。

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