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トラブル 2
「昨日は久々のオフだったので……その……友人と少し出掛けてたんです。それで、うっかり終電を逃してしまったので……」
おやおや? これはもしかして? そう言う事なのだろうか?? 昨夜、自分たちが雪之丞とのデートを目撃していたとは露ほどにも思っていない様子の弓弦に、蓮はにやりと笑ってみせる。
「へーえ? なにそれ、意味深だな。もしかして恋人とか?」
「ちっ、違いますよ! 只の友人です!」
慌てた様子で顔の前で手を振る弓弦の顔が赤い。否定のしようがないほど嘘が下手だと蓮は思った。
映画の中の人物と同一人物だとは到底思えない。 チラリと雪之丞の方を見れば、居た堪れないのかスマホに視線を落として聞こえない振りをしている。
もっと突っ込んで色々と聞きたいところだが、流石に今はそんな事をしている状況では無さそうだ。
「まぁ、いいや。その辺の事は落ち着いたらじっくり聞かせて貰おうかな。ねぇ、雪之丞? お前も気になるだろ?」
「ひゃいっ! えっ、え……っあ、ぁあごめんっ聞いてなかった」
こちらは弓弦よりもっとわかりやすい。わざと話を振ってやればあからさまに肩を跳ねさせ、視線を思いっきり泳がせる。 その様子にドs心が擽られ、つい根掘り葉掘り聞きだしてやりたい衝動に駆られたがナギにわき腹を小突かれて、ハッとして口を閉じた。
「もー、駄目だよお兄さん。今はそれどころじゃないでしょ。その件は、後で詳しくと追及しよ? ね?」
「ちぇっ……わかったよ。仕方ないなぁ」
明らかに挙動不審な二人の関係が何処まで進展したのか正直かなり気になるのだが、仕方がない。それにしても、美月も東海も何処で何をしているのだろう?
そんな事を考えていると、背後からバタバタと煩い足音が聞こえて来た。
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