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トラブル3

「はよーっす。あれ? みんな早くない?」 「はるみん!」 小走りに駆けて来たのは、東海だけだった。東海は廊下に集まっている面々を見比べ、何かおかしいと思ったのか首をかしげる。 「おはよう、東海。美月さんは一緒じゃないのかい?」 「あぁ、美月なら凛さんに呼び出されて、随分前に此処に着いてるはずだけど……。確か今日は『役作り』のための個人的な指導を受けるからって前々から約束してるって言ってたから」 「役作り? そっか、よかった彼女に何かあったわけではないんだね?」 「え? う、うん……多分? って。アイツいないのか。って言うか、アンタ 達は廊下で何やってんだ?」 「弓弦君の恋愛事情について追及しようと思ってただけだよ」 「っ!? 何ですかそれっ!? だから、友人との食事会だったと言っているでしょう?」 蓮の一言にすかさず弓弦が目を丸くして反論してくる。その横で雪之丞が顔を伏せて困惑しており、蓮はにやりと口角を上げた。 「草薙君の恋愛事情? 暇人かよ」 「えー、でもはるみんは気にならない?」 「別に。つか、呑気すぎだろ」 寧ろこの状況で動じないあたり、東海の方が大物のような気がする。 「でもまぁ、とにかく。美月さんに何もなくてよかった」 「そうだね」 蓮の言葉に、その場にいた東海を除く3人が頷いた。 「それにしても、じゃぁなんでこんなに慌ただしくしてるんだろう?」 「うーん? 俺ら放置するくらい忙しいって珍しいよねぇ」 これじゃぁ堂々巡りだ。取り敢えずバタバタしているスタッフの一人を捕まえて話を聞かなくては。 顔を見合わせそんな事を話していると、話題が逸れて何処かホッとしたような表情を浮かべた弓弦が小さく「あっ」と声をあげた。 「今、マネージャーからメッセージが届いたんですが……。今日使用する予定だったスタジオの機材トラブルらしいです」 「機材トラブル?」 「はい。マネージャーによれば、朝一で出社したスタッフが現場のチェックを行おうとスタジオを覗いてみた所、天井からメインのライトが落ちていたと」 「うっそ、何それこわっ! あれって落ちるものなの?」 話を聞いて一同騒然となる。もし、演技中に部屋のライトが落ちてきたらと思うと……背筋が凍る思いがする。 「いま、マネージャーが他のスタッフと一緒に、急いで交換用の機材を手配してるらしいんですけど……。いつになるか正確なことはわからないそうです。原因は不明……」 「成る程。それじゃぁ確かに皆、混乱しても仕方ないね」 「……うん。でも、こんなトラブルは滅多にない筈なんだけど……」 ふむ、と蓮は思考を巡らせた。いくら、長年使用しているスタジオとは言え、あんな大きな照明器具が自然に落ちてくるなんてありえるのだろうか?

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