328 / 351

トラブル4

「あ! 蓮さん居た!」 「え?」 突然声を掛けられ、顔を上げると視線の先には息を切らせた美月の姿。 「良かった。遅いから心配したよ……。と言うか兄さんは? 一緒じゃないのかい?」 「連絡も入れずに遅れたのは本当に悪かったと思ってるの。でも、これには深いワケがあって……」 モゴモゴと口籠る美月に一同は互いに顔を見合わせ首を傾げる。 「それって、機材トラブルの件と何か関係あるのかな?」 「え? 機材トラブル?」 きょとんとして首をかしげる彼女は、とても演技をしているようには見えなかった。恐らく、本当に何も知らされていないのだろう。 「そう言えば此処に来る途中スタッフがバタバタ走り回ってたわね。何があったの?」 「面倒くせぇな。それは後から教えてやるから、そっちでなにがあったのか教えてくれよ」 面倒くさそうに問う東海の声に、美月はふぅと息を吐き出してからすっと視線を前に向ける。 「えっとね、何処から説明していいのかわからないんだけど……。今朝、凛さんに演技の個人指導を受けていたら扉の隙間に封筒が挟まってたの」 言いながら美月はポケットから一枚の白い封筒を取り出して見せる。コンビニでも買えそうな封筒の中には、三つ折りになった紙が一枚入っていた。 一斉に美月の手元を覗き込むと、そこには雑誌や新聞の文字を切り取った文章が貼り付けられており、『ミドウ レンをコウばンさセよ』と、記されて あった。 「――これ……」 「誰かの悪戯にしては名指しだし、気味が悪くて。しかも……刃物でずたずたになってたのよ。蓮さんのスーツ……」 「えっ!?」 「衣裳部屋は厳重に鍵が掛かってた筈なのに、蓮さんのだけが破れてて……。流石にこれは事件性が高いって事になって、慌てて蓮さんに連絡入れようとしたんだけど、なんでか電波が上手く繋がらなくって……それで、急いで走って来たんだけど……」 美月の言葉に、その場にいた全員の表情が一気に強張った。 「ねぇ、お兄さん……もしかして、天井が落ちて来たのって偶然じゃなくって……」 「蓮さんを狙っていた可能性が大きいですね」 「――ッ」 ぐっと息が詰まるような思いがした。自分が狙われるなんてそんなまさか……。だが、これは明らかに悪意を感じる。 一体誰がこんな事を……。 ゴクリと息を呑む音がやけに大きく響く。

ともだちにシェアしよう!