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トラブル 5

「お兄さん……」 「だ、大丈夫……。平気だよ。ナギ……心配しないで」 そうは言っても、明らかな殺意を感じて平気なはずはなかった。 心臓が痛いほど脈打ち、嫌な汗が背中を伝う。 「今、凛さんも対応に追われてるみたいで……。安全が確保されるまでは私たちも自宅待機してて欲しいって、凛さんから伝言を預かって来たの」 「まぁ、確かにそうなるよな」 「……せっかく、軌道に乗り始めてたのに……」 雪之丞の残念そうな声がやけに大きく響いて、出演者全員が重い空気に押し潰されそうな気分になった。 「クソっ……こんな大事な時に……」 「なぁ、オッサン。何か心当たりはないのかよ?」 「うーん……? 心当たりか……」 「この間のさ、アイツじゃない? ほら、蓮さんを昔ケガさせたって言ってた元スタッフ……」 そう言えばそんな奴もいたような気がするが、アイツがそんな手の込んだ事をするだろうか? 凛から次は容赦しないとまで言われていたのに? だが、衣裳部屋に簡単に潜り込めると言う事は、内部に詳しい者の犯行である可能性が高い。 そう考えれば、現在のスタッフの中に塩田と繋がっている奴が居て、そいつと共謀して今回の事件を起こしたとしても不思議ではない。 前回も、あそこで出会うのは不自然だと思っていたし、もしかしたら裏で糸を引いている誰かが……。 「あの、もしかして……今も、このスタッフに混じって私たちを監視してる誰かが居るって事ですよね?」 「……っ確信は無いけど、そう言う事になるね」 弓弦の言葉に、その場にいた全員が凍り付いた。今まで和気藹々としてきた。 色んな修羅場を一緒に乗り越えて来た仲間だったはずのスタッフに裏切者が居るなんて……。 出来れば信じたくはないけれど、今回の一件は余りにも不審点が多過ぎる。

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