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トラブル 10

「警察に公表する気は無い」 突然、降って湧いた声に一同が一斉にそちらを振り返る。 そこには疲れ切った表情の兄の姿。 「御堂さん、どういうことですか? 事件性が高い以上はきちんと捜査してもらった方が……」 「ちょっと面倒な事が起きたんだ」 「面倒な事……? 僕を降板させろっていう脅迫文の事ならさっき彼女から聞いたよ」 蓮の言葉に凛は首を横に振る。 「いや、違うんだ……それとは別件で……」 「……別件?」 意味深な言葉に一同が首を傾げると、凛は苦虫を噛み潰したような表情でナギと蓮を見た。そして、重い息を吐きだすと困ったように頭を掻きながら口を開く。 「取り敢えず、小鳥遊君と蓮以外は戻っていい。すまないが状況が落ち着いたら連絡をするから、それまでは待機しておいて欲しい」 「どうしてですか!? どうして、オジサンとナギだけ!? 俺らは蚊帳の外なんてそんなの嫌です!」 珍しく東海が食って掛かる。だが、凛は無表情のまま首を横に振った。 「これは……小鳥遊君と蓮の問題だ。他のメンバーには関係ない」 その言葉に全員が息を吞んだ。そして、暗に自分達は仲間ではないと宣言された気がした。勿論、凛がそう言う意味で言ったわけではないのは全員わかってはいるが……それでも何となくショックを受けているだろうことは容易に想像がついた。 「兄さん、もっと他に言い方があるだろ……」 「いいんだよ、これで……」 「でも……」 食い下がる蓮に凛はそっと目を伏せた。そして小さくため息を吐くと再び全員の顔を見て口を開く。 「少し……。いや、かなり込み入った話になるから今は言えないが……。一歩対応を間違えれば共演者のお前らにも被害が及ぶ可能性がある。特に草薙君は知名度が高い分、巻き込まれたら無傷では済まない筈だ。対応をこれから考えるから、それまでは待機していて欲しいんだ」 「無傷では済まないって……。蓮さんと小鳥遊さんが関係していると言う事は……ゴシップ関係ですか?」 「え……」 結弦の冷静な言葉に思わずナギは声を上げる。それはつまり、そういう事なのだろうか?

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