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トラブル12

「兄さんこそ……相変わらず過保護過ぎだよ。どうして僕だけ……」 「お前が、狙われているからだ。切り刻まれたスーツをお前は見たか?」 「……いや……それは、見てない……けど……」 「あれをやった奴は、相当お前に恨みがあるようだ。狙われていると言う事は、お前の住んでいるマンションもバレている可能性が高い。お前を守るためだ……わかってくれ」 悲痛な面持ちで語る凛に、蓮はそれ以上何も言うことができず俯いて強く拳を握り締める。 なぜ? どうして?  犯人は一体何の目的があってこんな事を……。 「蓮君……悔しいのはわかるけど、今は凛さんの指示に従おう?」 「……っ……クソッ……」 オドオドとした口調で雪之丞に窘められ、蓮は唇を強く噛んだ。口の端が切れて血の味が滲んだが今はそんな事はどうでもいい。 「わかった。ナギ……、みんな……巻き込んでごめん」 「謝んなよオジサン。  大丈夫! きっと何とかなるって! おれはいつか近いうちにまたみんなで撮影出来るようになるって信じてるから」 「そうよ。悪いのは犯人なんだから! ナギ君も蓮さんも、何にも悪い事なんてしてない! それはアタシたちが一番よく知ってるし、信じてるから! だから、謝らないで」 「……はるみん……美月……」 二人は蓮の両手を握って力強く頷いた。そして、二人の言葉を引き継ぐように結弦と雪之丞も口を開く。 「御堂さん、今は我慢しましょう。情報が少なすぎる……何か解決策はないか、私の方でも調べてみますから……」 「ボクも……大した力にならないかもしれないけど……」 「お兄さん。大丈夫、今生の別れじゃないんだからそんな顔しないで。俺なら平気。実家に戻って大人しく弟の世話しとくよ」 その言葉に胸が熱くなるのを感じた。こんなに心強い味方は居ないだろう。そう思うと自然に目頭が熱くなり涙が零れそうになったので、それを誤魔化す様に鼻を啜る振りをして蓮は天井を見上げた。 「みんな、ありがとう……」 その言葉にそれぞれが安心しきったような微笑みを浮かべる。まだ何も解決していないが、今はこれで良いんだと思う事にした。 そんな四人の様子を見て凛は一人頷いている。そしてそっと蓮の肩を抱き寄せたかと思うとその頭を優しく撫でた。 「兄さん……?」 「……すまない」 その言葉は一体誰に向けての物だったのか……、そう呟いて辛そうに眉を顰めるとそのまま強く抱き締めてくる兄に、蓮は何も言えなかった。 「……何も心配するな。お前は俺が守るから絶対に」 凛が何を思っているのかは分からなかったが、敢えて追及することはしなかった。

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