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取引 2

『すみません。突然。今、大丈夫ですか?』 スマホから流れる本当に高校生か? と、疑いたくなるような落ち着いた声色に苦笑しつつ、蓮は口を開いた。 「大丈夫だよ、どうしたんだい?」 『単刀直入に言います。実は、私の知り合いに、今回の週刊誌を刊行している編集長が居たのを思い出したんです。あの記事が実際に市場に出回るまでまだ少し時間があると思うので、何か今回のネタよりもっと凄いネタを持ち込んでみてはどうでしょう? と言う提案なんですが』 「え?」 結弦の提案に、蓮は思わず素っ頓狂な声を上げる。 確かに一理あるかもしれないが……、自分はそんなに芸能界に精通しているわけではないし、ホイホイとそんなビックなネタが懐から出て来るわけもない。 「例えば? どんなネタだい?」 『そうですね……、週刊誌が喜びそうなのは……過激な性行為の現場が撮られたとか、実は整形をしていて素顔が別人だったとか……。大物芸能人の闇取引の現場とか』 「そんなのあるわけないだろ!」 あまりにも突拍子のない提案に、蓮は思わず大声を上げた。だけど結弦は怯むことなく言葉を続ける。 『でも、このままでは貴方達二人の熱愛報道が世に出回ることになるんですよ? あの写真だけじゃ判断は付きにくいですが、恐らくもっと確信を突いた写真を持っている筈ですし……』 「確かに、そうだけど……残念ながらそんなネタ持ってないんだ」 『そうですか。顔が広いあなたの事だからやばいネタ持ってそうな気がしたんですが』 結弦は自分の事を何だと思っているのだろうか。 『やっぱり、腕のいい探偵とか地道に探ししかないですかね』 「探偵……あ……!」 結弦の言葉に、蓮はとある人物の事を思い出した。腕がいいかはわからないが、過去に一度だけ協力してもらった事がある。 情報屋をやっていると言う、自称名探偵。 「ありがとう。このままジッとしているわけにもいかないし、彼の事、当たってみるよ」 『そうですか。私の方でも何かないか探ってみます。きっと、道は開けるはずだから……諦めないで下さい。今、姉さんや棗さん達とみんなで打開策を考えているので』 そう言って、結弦は電話を切った。その心強い言葉に思わず目頭が熱くなるが、今はそんな場合じゃないと雑念を払いのける様に頭を振る。 自分が迷惑をかけているのに、皆が諦めていないのだから、感傷に浸っている場合では無いじゃないか。 「よし! やろう!」 頬を叩いて気合を入れなおすと、蓮はスマホのフォルダーから探偵の名前を探し出し、迷う事なく通話ボタンを押した。

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