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取引 3

薄暗い部屋の中、パソコンのモニター上に沢山のファイルが映し出される。 『取り敢えず、御堂さんがおっしゃってた資料集めてみました』 「相変わらず仕事が早いね。東雲君。助かるよ」 画面越しに、人好きのしそうな顔立ちをした黒髪の青年、東雲が疲れ切った顔のまま少し照れたように笑う。 年の頃は24,5歳位だろうか。Tシャツにジーンズと言うラフな恰好が、彼の見た目の若さを際立たせている。 『それはいいんですけど、毎度毎度人遣いが荒いの何とかなりません? 突然連絡くれたと思ったら2日でニュースのネタになりそうな何処にも出回ってない有名人カップルを調べてくれって……鬼かと思いましたよ』 「ハハッ、まぁちょっと急ぎだったから……」 『もう慣れましたけど……。結構いい値段払ってくれるし。 もし、もっと詳しく調べて欲しい人が居たら教えて下さい』 以前から噂のあったカップルもいれば、全くノーマークであろう新人女優の熱愛報道など、ざっと見ただけでも複数名の名前が挙がっている。 自分で頼んでおいてなんだが、短い期間によくここ迄調べたものだと改めて感心してしまう。 ZOOMでの話を終え、改めて貰った資料を真剣にチェックしていると、不意に一枚の写真に目が留まった。 「あれ……この二人……」 そこには、莉音とMISAの二人がお忍びで大阪デートを楽しんでいたらしいと言う噂があると言う文言と、二人が笑い合っている写真が載っていた。 デートをしていたとされる日付けは、蓮とナギが初めて出会ったあの日。 「……――」 もし、自分たちの情報を編集部に売ったのがあの二人だとするのなら……。 自分達よりも圧倒的に知名度が高いあの二人の記事の方が、世間の食い付きはいいんじゃないだろうか。 そうなれば、当然大きな話題となりワイドショーや週刊誌がそれを取り上げるのは容易に想像できる。 ただ、問題は……決定的な証拠となる写真が無いと言う事だろうか。  いや、でも……自分が助かるためとはいえ、あの二人をダシに使ってもいいのだろうか?  もっと全然知らないような女優とかの方がいいのでは?  そんな良心の呵責に苛まれていると、スマホのディスプレイにナギの名が表示された。 そう言えば、最近まともにナギと話すら出来ていない。最後に話したのはいつだっただろうか? そう遠くない筈なのだが、もう何年も前の様な気がする。

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