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取引 6
「もしかしたら、その事がネタになれば……。いやでも、そんな写真を撮れるチャンスなんて……」
『そうだね。多分二人のマネージャーが裏で手を回してると思うから公になる
のは中々……難しいかも』
「……っ、わかった。取り敢えず明日もう一度東雲君に連絡取ってみるよ」
そうこうしているうちに時刻は既に22時を過ぎていた。そろそろ電話を切らなければ、兄が戻ってくるかもしれない。
別に悪い事をしているわけでは無いのだから、気にしなくてもいいのだろうが何となく、兄の前でナギの話題を出すのは良くないような気がして避けている。
『……お兄さん』
「ん?」
『好きだよ、凄く。大好き』
「……うん」
ああ、今すぐナギに会いたいな。会って抱きしめて、彼が自分の恋人なのだと実感したい。
「僕も大好きだよ」
『あ! そこは好きじゃなくて、愛してるって言って欲しいんだけどな』
「……っ、それは、実際に会ってからだよ」
『ちぇ。……早く会いたいな』
相手の些細な感情に一喜一憂してしまう自分が少しおかしい。今まで、他人の気持ちなんてどうでもよかった。誰かが自分の事をどう思おうが、自分はただ自分が思った事を貫く。
だけど、今は違う。その事で相手を傷つけたくないし悲しませたくもないと思う様になった。これは成長なのだろうか? それとも……ただの心境の変化か?
おやすみ。と言って切られた電話が何故だか愛しくて、画面の照明が消えるまで見つめてから静かに閉じた。
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