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取引11

東雲に貰った莉音とMISAのお忍びデートのネタは持って来ている。だが、これだけじゃ恐らくまだ弱い。 せめて、東雲に頼んだ例の情報を裏付ける資料があれば……。 結弦がほんの一瞬、雪之丞を見た気がした。一旦目を伏せ小さく息を吐くと、ゆっくりと何かとんでもない事を口にしそうな気配がして慌てて蓮がそれを遮った。 「犬飼さん。根も葉もない噂を載せて、もしも僕と小鳥遊君が名誉棄損だと訴えたらどうするつもりです?」 「御堂さん!」 「大丈夫……。此処は僕に任せて」 「……ッ」 結弦の事だ。将来的な自分のスキャンダルと引き換えに記事を取り下げてくれなんて事も言い出しかねない。  そんな事、絶対にさせたくないしナギだってきっとそんなの望んでいない。 「事実無根……ねぇ? キミは我々が他に情報を掴んでいないと本気で思っているのかい?」 嫌な言い方をする男だ。恐らく、こんなやり取りは日常茶飯事なのだろう。 その証拠に犬飼の表情は余裕そのもので、焦る蓮を見て楽しんでいる様にも見える。 だが、此処で怯むわけにはいかない。 「さぁ? 僕にはわかりかねます……。が、事実ではない事を公表すると言われて僕らも大変迷惑しているんです。兄にも言われてませんか? あの記事はでっち上げだと。確かに僕は、人との距離感がちょっとおかしいと言われることが多々あるので、スキンシップの一環がそう言う風に見えたのかもしれませんが……」 「ほぅ? 小鳥遊君の寝室から君が上裸で出て来た動画が出回り、そこから一気に視聴率を伸ばして行ったようだが、それはどう説明する気だ?」 「あぁ、アレですか? 恥ずかしながら前日に少し飲みすぎてしまって……。べろべろに酔って盛大に服を汚してしまった僕を彼が介抱してくれただけです。いやぁ、前後不覚になるまで飲むなんて本当に情けない」 「……チッ」 「もしかして、事実を捻じ曲げて記事にするつもりじゃないですよね?  あ、証拠必要ですか?」 よくもまぁありもしない話がぺらぺらと出てくると自分でも驚く。昔から、表情が良く読み取れないと言われて来たこの顔と話術はこういう時にはとても便利だ。

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