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取引12
「実はお恥ずかしながら、僕すごく酒癖が悪いんです。……酔うとキス魔になってしまうんですよ。だから、あんな写真撮られたんですかね?」
「ハッ、そんな見え透いた嘘を……」
「嘘じゃないぜ! このオッサンマジで酒癖悪くてよ、酔っぱらうと誰彼構わずキスしだすんだ。流石にそんな危険人物とは飲みたくねーから、おれ達みんないつもナギにガードしてもらっててさ」
蓮の言葉に犬飼が鼻で笑った時だった。それまでずっと黙って成り行きを見守っていた東海が便乗して来た。
「じ、実はアタシも……」
「え? 姉さんにまで? ……実は私も一度……」
何だこの茶番は。思わず頬が引き攣りそうになったが、自分の手をギュッと抓って崩れそうになる表情を何とかもとに戻す。
流石に美月や結弦にキスをした記憶はないが、今はそう言う事にしておいた良さそうだ。
「と言う事で、あの記事をどうしても出すというのならこちらも法的な措置に取り掛かろうと思いますが大丈夫ですか? 一時的に売り上げが上がったとしても、敗訴したら犬飼さんの雑誌の評判ガタ落ちになりますよね?」
蓮の言葉に、犬飼は顔を顰めて考え込んでいる。このまま押し切れそうな雰囲気に、この調子でもっと畳みかけようと口を開こうとした時だった。
「お客様、困ります! 今接客中で……」
「ごめんなさい! 中に居る人に急用があるんです!!」
なにやら廊下が騒がしいと思ったらノックもなしに応接室のドアが勢いよく開いた。
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