350 / 351

取引 13

「……そう、ですか……。では、この情報はご存じですか?」 残念そうに溜息を吐いて、改めて東雲が持ってきた資料を開いて提示する。  そこには、彼ら二人が現在放送中のドラゴンライダーの撮影中に演者の子供たちに暴言を奮ったという何人かの証言と、写真、莉音がスタッフの態度が気に入らないと高圧的な態度を取り、器物を破損している所、それと1本のUSBが添えられていた。 「……な、なんでこんなものを……」 「業界内では有名な話ですよ。彼、気性が荒いんです。草薙美月さんに確認したら、MISAさんは大の子供嫌いだというじゃないですか。それで、気になって先ほどの友人に調べて貰っていたんです」 チラリと東海と美月に視線を送れば、ハッと気が付いたように美月が前に進み出た。 「そうよ! MISAさんは子供が嫌いみたいで……オーディションで何度か会ったけど、小さい子供がいるのに歩きたばこしてたり、それを咎めたら暴言を吐いたりして怖かったのを覚えてる」 「莉音さんは確かにすげぇ人ですけど、怒らせるとヤバいって俺らの間じゃ暗黙のルールみたいなもんだあるんだよな……」 美月と東海が援護射撃をしてくれたおかげで、犬飼の顔色が変わった。その目は確実に写真に写っているUSBに向けられている。これはいけるかもしれないと蓮は次の一手に出ることにした。 「犬飼さん。子供番組に出演している女優とアクターの蜜月関係に加えて、この暴挙……どう思います? 彼らは狡賢いので今まで上手く掻い潜って来たみたいですが……。僕らの記事よりずっと話題になると思いませんか?」 「……わかった。この件は社内で検討することにしよう。それまではキミたちの記事も保留にさせてもらう」 「ありがとうございます。では、この資料は一旦持ち帰らせて貰いますので」 「なっ!?」 「当然ですよ。僕らの記事を取り下げてくれると確定したらお渡しします」 犬飼の手元から資料を奪い、流れるような仕草で封筒にしまい込む。ニッコリと悪魔のような笑みを浮かべた蓮に、犬飼は苦虫を嚙み潰したような顔で呻いた。

ともだちにシェアしよう!