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第44話※
※性描写が入ります。苦手な方はご注意を。
「ん、ぁ……っふ、…」
僕の口内を蹂躙しながら、オリヴァーは器用に僕の着ていたシャツを取り去っていく。
いつもはわずかに感じていたシトラスの香りが、むせ返るほど近くにある。熱も香りも、全てが彼に染まっていくのをどこか他人事のように感じていた。
やがて露わになった肌に、オリヴァーは確かめるように優しく手を這わせていく。
初めて素肌に触れるその手は冷たくて、僕の身体がいかに熱を持っているのか思い知らせれた。
今さらだけれど、この人に触れるということは男同士でセックスをするということで、多分僕はそっち側なわけで。
「んっ、…」
ぴくりと思わず身体が跳ねてしまったのは、熱と拭いきれない恐怖からだった。
「……大丈夫だ。」
名残惜しそうに僕の唇から離れたオリヴァーは、僕の髪を優しく撫ぜてから額にちゅっと口づけを落とした。
そうして身を起こしてから自ら着ていたシャツを脱ぎ捨てる。顕になった逞しい体躯に、思わず息を飲んだ。
「怖がらなくていい。力を抜いていろ。」
まるで恋人にでもするみたいに優しく身体を撫ぜられながら、首筋から鎖骨のあたりまでゆっくりと丁寧に口づけされる。時折強く吸われて赤く跡を残されれば、僕の口からはたまらず熱のこもった声が漏れた。
「ぁっ、…んっ……」
一通り身体のラインを堪能したオリヴァーの右手が胸元にのばされる。胸の突起を優しく引っかかれては指先でくりくりと弄られて、徐々に芯を持って立ち上がった突起を今度は口にふくまれた。
「ひっ……!?あぁっ、んんんっ」
自分でも聞いた事のないような声に羞恥心はどんどん膨らんでくる。
熱い舌に優しく舐められて転がされては、僕は自らの口を押さえて必死に声を抑えることしかできなかった。
ちろちろと小刻みに舌を動かしながら、空いている方も指できゅうきゅうと摘まれる。次第に両方の突起が真っ赤に熟れた果実みたいに赤く腫れていくのが自分でもわかった。
「っ……も、やめ……」
「ん?気持ちいいのか?」
頭が上手く回らなくて、咄嗟に英語が出てこない。
オリヴァーは反対側の胸に舌を這わせ、強く吸いついた。
「ひあァっ!……っ、やぁっ」
嫌々と僕が首を振れば、ようやく胸元からオリヴァーの口が離れていく。けれどほっと息をつく間もなく、今度はオリヴァーにズボンの布越しに下肢を撫ぜられた。そこはすでに緩く熱を持ち始めていて、恥ずかしくて思わず腰を引いてしまう。
「や、…んあっ……」
「心配するな、すぐにもっと気持ちよくしてやる。」
僕の心を見透かしたようにオリヴァーは薄く笑う。ズボン越しのもどかしい刺激に身をよじって耐えれば、ようやくズボンのファスナーを下ろして下着ごと一気に引き下ろされた。
「……や、っ!」
他人の前に晒されたことのない場所を隠すように脚を閉じようとしても、あっけなくオリヴァーの手に阻まれる。
「っ!や、だめ……っぁ、」
オリヴァーの手が僕の熱に絡みついた瞬間、思わず抵抗して肩を押した。けれど、オリヴァーは強引に脚を開かせてその間に身体を割り込ませると、深いキスで僕の動きを封じ込めてしまう。その間にもオリヴァーの手は動き続けていて、ぐちぐちと次第に湿った音が部屋に響き始めた。
「ふっ……んっ……」
ぞくぞくと背筋をかけ上がる快楽が怖くて、僕は必死に首を振った。恥ずかしいのに気持ちがよくて、もう自分が何を考えているのかすらわからない。
視界が白く染まっていく。
「あっ……やぁ、もっ……いくっ、でちゃ、っんぁあっ!」
限界はあっという間だった。
今までに感じたことがない衝撃と解放感。吐精の快感が抜けきれずに、ビクビクと身体を震わせる僕の額に、オリヴァーは愛おしそうに笑って口づける。
「……やはりシーは綺麗だな。」
その指に絡む白濁を見せつけるようにしながらペロリと舐めとる。それだけで先程までの快楽が呼び起こされて、またゾクリと身体が震えた。
「……はじめてなんだろう?少し待っていろ。」
そう言ってオリヴァーはベッドを離れると、部屋の隅に置かれていたスーツケースから何かを取りだして戻ってきた。
「少しだけ我慢していろ。……すぐに気持ちよくしてやる。」
オリヴァーはそう言いながら、手にしたチューブから半透明のジェルのような物を手のひらにとろりと出した。
「……なんで、そんなもの…持ってるんですか、」
「ん?今日は初めからこうしてシーを抱くつもりだったからな。……ほら、力を抜いていろ。」
オリヴァーはジェルを少し温めるように両手で擦り合わせてから、その手で僕の双丘を割り開いてあらわになった蕾を撫ぜる。
「ひっ、ん、……」
そんな所に触れられるのはもちろん初めてだ。けれど、この行為の意味くらい僕だって知っている。
逃げ出したいくらい恥ずかしかったけれど、僕はオリヴァーに言われるまま、なんとか力をぬこうと息を吐いた。
「……そうだ、そのまま息を吐いていろ。」
ジェルをまとった指先でぬるぬると入り口を解される感覚に鳥肌が立った。やがてつぷりと指先が挿入されて、ゆっくりと抜き差しを繰り返していく。僕の内にある快楽を呼び起こしていくかのように、内壁を撫ぜながら徐々に奥にまで。息を吐きながら異物感に耐えていれば、オリヴァーの指がいつのまにか増やされていて、三本の指が中でバラバラに動いていた。
「もっ、……んぁっ……あっ、ん、あ、」
苦痛に耐えていた吐息はいつしか甘く蕩けていて、もう押さえることすらできずに半開きのままの唇から漏れていく。
身体が熱い。熱すぎておかしくなりそう。
もっともっと、この人が欲しい。僕の全てを差し出すから。だから、
気がつけば、僕は行為の先を求めて自ら腰を揺らしてしまっていた。
「おり、っぁ、も、」
「っ、あまり煽るな。傷つけたくはないんだ。」
苦痛に耐える熱い吐息が耳に当たる。
オリヴァーは僕の中から指を引き抜き、下衣の前を寛げてそのまま脱ぎ捨てた。
先程のジェルと一緒に用意していた避妊具のパッケージを口にくわえ、封を切る。
初めて見る他人のそれの質量と雄の匂いに、こくりと無意識に喉が鳴った。
「、いくぞ。」
「ぅ、……」
あてがわれた質量に一瞬怖じ気づいてしまう。けれどそんな僕の気持ちなんてお構いなしにオリヴァーは熱をゆっくりと僕に沈めていった。
「ぐ、…ぁ…」
圧倒的な質量に呼吸が止まる。
みしみしと身体が軋むような感覚に、たまらず瞳から涙がこぼれ落ちた。
「っ、シー、力をぬけ、」
「む、り、…っ、」
多分、まだほとんどと言っていいほど受け入れられていない。けれど圧迫感と引き攣るような痛みに、僕は上手く呼吸が出来なくてハクハクと酸素を求めた。
「っ、まだ無理か…」
オリヴァーは腰を引こうとする。けれど、僕は離れていく熱が悲しくて、咄嗟に抱きついてそれを阻止していた。
「っ、……シー?」
「……やめ、ないで……」
回らない頭でなんとかそれだけ口にすれば、オリヴァーは僕の背中を優しく撫ぜる。
「無理はするな。……シーを壊したいわけじゃないんだ。」
僕は首を振った。確かに身体は辛くて苦しいけれど、心はもっと苦しい。
僕達にこの次はないんだ。言葉も、心の内も全てを伝えられないのなら、せめて身体だけは。今この時だけはこの人で満たされたい。
僕は涙で滲む視界で、オーシャンブルーを真っ直ぐに見上げる。
「……壊して、いい、…からっ、……やめないで…」
それは、紛れもなく僕の本心だった。
「っ、……くそっ、」
ひゅ、と息を飲む音と悪態が耳元で聞こえたと思った瞬間には、軋むほどに身体をベッドに押さえつけられていた。目の前にあるオーシャンブルーが一瞬にしてな欲望の色に染まる。
怖い。そう感じた時には、ずん、とオリヴァーに奥深くまで貫かれていた。
「ひ、んァあァっ!?」
身体を引き裂かれる衝撃に、一瞬意識が飛ぶ。
けれど、襲い来る激痛がそのまま気を失うことを許してはくれなかった。
「あ、ァ、ア、ひァっ、」
「くそっ、煽るなと言っただろう!くそっ、シー、…シー、っ、」
引き抜かれては最奥まで打ち付けられる。
うわ言のように僕の名前を呼びながら、オリヴァーは何度も何度も楔を打ちつけた。
「ひ、ぁ、ァっ、ア、」
言葉も呼吸もままならない。目の前の激しい波に飲み込まれていく。
何度も何度も僕は快楽と苦痛の渦に翻弄され、わけもわからず目の前の身体に縋りついた。
「ぁあっ!んァ、あっ……!」
「シー……っ!」
ぐちゅぐちゅと結合部から漏れる音が次第に速くなっていく。
その頃には僕の理性は完全に焼き切れていて、意味をなさない言葉だけが口から漏れていた。
「んぁっ……、っんア、あ、あっ、……」
身を引き裂く痛みと、背筋をかけ上がる痺れにも似た快楽。その二つの異なる感覚に翻弄されながら、僕は必死でオリヴァーに縋りついて嬌声を上げ続けた。
「ひっ、んっ、ぁっ……ア、」
激しく揺さぶられる度にまぶたの裏に火花が散る。
霞んだ視界の中、熱を孕んだオーシャンブルーだけが鮮明だった。
「もっ……だ、め……ぁっ!」
多分日本語で叫んでしまっていた気がする。それでもオリヴァーは察してくれたのだろう。僕の身体をより一層強く抱きしめてくれた。
「っ、……オレも、」
荒い息遣いが耳元に響いた。
それと同時に一際深く貫かれて、僕はオリヴァーの腕の中で身体を大きく跳ねさせて熱を吐き出した。
「ひっ、ぁっ……ああっ!」
息ができないくらい強く抱きしめられる中で僕はビクビクと痙攣し、反動で中の熱をきつく締め付ける。
「く、……っぅ、」
耳元にかけられた苦しげな吐息と、僅かに跳ねた身体。僕の中で、薄い膜越しにオリヴァーが爆ぜたのがわかった。
熱を感じながら、視界と意識が揺らいでいく。
内も、外も、この人でいっぱいだ。
「シー、……」
急速に遠のいていく意識の中で、僕はこの瞬間、たしかに満たされていた。
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