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第14話 余裕

「いいのか」 「えっ……?」 「リベンジさせてくれるのか」  桜庭の目は笑っていた。  それを了承の意味だと気づいて、朝比奈は逆にうろたえる。 「実は、俺もずっと気になってたんだ。前回は酷い抱き方をしたからな」 「酷いなんて思ってなかったけどさ。せっかくだからもうちょっと練習しといてもいいかなって」  わざと軽い調子で朝比奈は笑ってみせる。  言い訳はなんでもいい。  もう一度抱いてもらえるなら。  桜庭がその気になってくれるなら。  気が変わらないうちにと、朝比奈は桜庭をベッドに誘う。 「総一郎、疲れてるんだろ。俺がしてやる」  朝比奈が桜庭の下半身に手をのばそうとすると、桜庭がそれを止めた。 「いい、今日は俺がやる」 「でも……」 「お前は、俺を採点するだけでいいんだ」  桜庭は薄く笑みを浮かべて、朝比奈を押し倒す。  唇が重なる。  忘れかけていた、とろけるような熱いキス。  堅物の総一郎のどこにこんな情熱が隠れていたんだろう。 「総一郎……キスは100点」  朝比奈が笑みを浮かべると、桜庭は少し照れたように苦笑して、はだけた朝比奈の胸に唇をすべらせた。  執拗に乳首を攻める桜庭の愛撫に、朝比奈は簡単に追いつめられていく。  あの晩のことが、鮮明によみがえってくる。 「陸、本当に乳首、敏感だな」  桜庭がクスっと笑うと、朝比奈は顔を赤らめてふい、とそっぽを向く。  二度目だからか、桜庭の余裕がかいま見える。  セックスの時にこんな軽口を叩くような男だったということが意外だ。 「ここも、もうこんなになってる」  朝比奈の下半身に触れ、繊細になで回す指先。  設計士の指先は器用なんだろうか、と検討違いのことを頭の片隅で考える。 「陸……」  耳元で名前を呼ばれて、朝比奈はビクっと体を震わせる。 「お前、セックスの最中に名前呼ばれると、感じるみたいだな」  桜庭がまたクっと笑う。  まるでひとつひとつ、朝比奈の体を暴いていくことを楽しむように。 「ひ、あ……そ、いちろ……」  耳から首筋、胸を何往復もたっぷりと唇で這い回りながら、下半身をぐちゅぐちゅとゆるやかに刺激する。  少しずつ追いつめるように、ゆっくりと。 「あ、も……ダメ、イキそう……」  ひくん、ひくん、と下半身を震わせ始めた朝比奈からやっと唇と手を離す。  朝比奈は黙って引き出しからコンドームとローションを取り出して、差し出した。 「これは後だ」  コンドームの箱を横に起き、桜庭はローションを朝比奈から取り上げる。 「この間は悪かったな、何も知らなくて」  手にたっぷりとローションを出した桜庭は、少しおびえた顔をしている朝比奈に笑いかける。 「今日は痛い思いはさせない。できるだけな」  そう言うと、桜庭はゆっくりと指を一本、朝比奈の体に挿入した。 「そう…いちろ……誰に聞いたの……そんなやり方」 「調べる方法がいくらでもある」  わざわざ調べたのか、と朝比奈は内心驚いた。  俺をまた抱くつもりだったんだ……  それがわかっただけで、胸が熱くなり、泣きたい気持ちになってくる。  桜庭の指の動きに、朝比奈がビクンと反応すると、桜庭は面白そうに笑みを浮かべた。 「教科書通りだな。ここ、感じるのか」 「あ……やっ……そこっ」  ぐりぐりとその場所を擦られて、朝比奈は小さくのけぞるように声をあげた。 「じっくり広げてやるから、我慢しろよ」  二本揃えた指で、急所を探りながら桜庭は意地悪な笑みを浮かべる。 「ああっ、ダメっ、そこばっかりっ」 「そんなにここは感じるか」  ピストンのように指を動かしながら、桜庭は朝比奈のモノに手をのばす。 「触ったらイクっ、ダメっ、ああっ」  三本目の指も突っ込みながら、桜庭は朝比奈のモノにじっとりと舌を這わせ始めた。 「も、いいからっ、そんなこ、と……しなくて、や、ああ」  喘ぎ声がすすり泣きに変わって、やっと桜庭は満足したように朝比奈のモノから口を離した。  コンドームの袋の端を口にくわえて、器用に片手で取り出すのを見て、朝比奈は胸が高鳴る。  慣れてる……  そんな芸当もできる男だったんだ。  女嫌いでセックスの経験値はそれほどでもないんだろうと思っていたのに。 「陸、力抜いて……」  唇がふさがれる。  この後にくる衝撃を、もう朝比奈は知っている。  あの時と同じだ。  とろけるようなキスの狭間に、熱い固まりに貫かれる。  しびれるような快感。  体の中にある快感のポイントが、今にも絶頂を迎えそうだ。 「痛くないか」  気遣うように桜庭が朝比奈のモノに触れると、朝比奈は涙目で体を震わせる。 「どうした」 「イク……もう、イク……」 「気持ちいいのか」  笑いながら桜庭が腰を動かすと、朝比奈はのけぞるように達してしまう。 「今日は早いな」 「総一郎が……あんなに焦らすから……」  拗ねたようにキスをねだる朝比奈の唇を貪りながら、ゆっくりと腰を動かす。  的確に急所をとらえながら。

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