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第19話 嫉妬
答えられずにうつむいていると、桜庭はフっと顔をゆがめて笑った。
「俺は当て馬か」
「違う、そんなつもりじゃ……」
朝比奈が思わず顔をあげると、桜庭はまっすぐに朝比奈を見ていた。
射るような視線で。
「お前、言ったよな。俺には愛がないって」
「それは……」
「お前には愛はあるのか。お前、他の男の代わりに俺に抱かせて楽しかったか」
「違う……」
「何が違う! お前のやってることは、俺には理解できん!」
桜庭はガタンと音を立てて立ち上がると、朝比奈の腕をつかんでベッドへ引きずっていった。
乱暴に押し倒して、朝比奈のシャツのボタンを引きちぎる勢いではだけ、ズボンを下着ごと脱がせて投げ捨てた。
「総一郎……」
朝比奈は、無抵抗だった。
どんなに桜庭が怒っていても、誤解していても、何をされてもいいと思った。
「嫌なら俺をけっ飛ばしてでも逃げろ。それぐらいできるだろう」
桜庭はベッドの下に手をのばし、隠してあったローションを探り出して、そそり立った自分のモノと朝比奈の股間にぶちまける。
朝比奈の足を大きく開かせ、膝の裏を抱え上げるといきなりモノを突きつける。
「逃げないのか」
「逃げない」
どちらも目をそらさず、にらみ合ったまま、桜庭は思いきり朝比奈の体を貫いた。
うめき声をあげて、朝比奈の顔が苦痛にゆがむ。
それでも朝比奈は嬉しかった。
たとえそれが怒りにまかせてでも、桜庭に抱かれるのを拒絶することはできなかった。
「なぜだ。なんで、俺に抱かれる」
桜庭は苦悩の表情で、朝比奈に問いかける。
「お前は好きでもない男に足を開くのか!」
ガツガツと突き上げられて、朝比奈は悲鳴を上げた。
目から涙がこぼれ落ちる。
「好きでもない男に、こんなことさせるわけないだろう!」
思わず叫んだ朝比奈の声に、桜庭はピタリと動きを止める。
「気付けよ……それぐらい」
泣き出しそうな顔をしている朝比奈のアゴをつかんで、これが最後だ、というように桜庭は低い声で詰問する。
「お前が好きな男は誰だ」
朝比奈は震えながら、口を開いた。
「総一郎に決まってるだろ……ずっと……ずっと前から好きだったんだ」
桜庭は表情を変えなかった。
そんなことは知っていた、とでもいうように、じっと朝比奈の目を見ていた。
それから、そっと触れるだけのキスを唇に落とした。
「それでいい。俺に嘘はつくな。二度と」
「いいの……?」
驚いたように、目を見開く朝比奈に、桜庭はため息をつく。
「お前が俺のことをどれだけ鈍い男だと思っているかしらんが、いくら俺でも抱いた相手の気持ちぐらいは気付くぞ」
桜庭はコツンと、げんこつで朝比奈の額を小突いた。
「立石さんとは、本当になんでもないんだ」
「そんなことはすぐにわかった。お前がこれをはめたままだったからな」
桜庭は朝比奈の左手を取り、指輪を朝比奈の目の前に突きつける。
「立石とキスしてた時は、殴ろうかと思ったけどな」
「し、してないっ。あれは、そう見えたかもしれないけど、絶対してない」
「陸、俺はお前が思ってるより、嫉妬深い。それも覚えておけ」
そうかもしれないな……と朝比奈は改めて思う。
さっきの桜庭の怒りが焼きモチだとしたら、相当だ。
立石から奪い取るようにキスをされた時のことを思い出して、顔が熱くなる。
「好きな男は、恋人になれない相手だと言ったのも、俺のことか」
「そうだよ」
「なぜだ。俺は対象外なのか」
「だって、総一郎はゲイじゃないだろ」
「今更それを言うのか……」
桜庭は力が抜けたように、がっくりと頭を垂れた。
「もう、お前に何回欲情したと思ってるんだ。俺がゲイじゃないというなら、これは何だ」
桜庭は突っ込んだままの自分の高ぶりを、擦りつけるようにぐりぐりと押し込んだ。
「あうっ……でっ、でもっ、総一郎は跡継ぎじゃないか。結婚だって……ひあっ」
「結婚はしないと言っただろう。まだ言うか」
桜庭は今度は確実に朝比奈の快感ポイントに、ぐりぐりと意地悪く擦りつける。
「あっ、あ、あああ……総一郎……」
「お前のココに突っ込んで、こんなことしていいのは俺だけだ! いいな!」
「あうっ、や、ああっ、そ、いちろ、だけだからっ」
「お前のイク顔を見ていいのも、俺だけだ」
桜庭は次第に腰を強く動かして、朝比奈を追いつめ始める。
「い、イクっ、も、ダメっ、ああっ」
「陸……1回しか言わないから、よく聞けよ」
桜庭が腰を激しく動かしながら耳元で低く囁くと、朝比奈はビクンと体を震わせてしがみついた。
「お前を愛してる」
「そ、総一郎っ、あああっ」
桜庭は照れをごまかすように、思い切りずぶずぶと突きながら、朝比奈の口をふさぐ。
ぐちゃぐちゃにキスをしながら、朝比奈が絶頂を迎えるまで突きまくる。
がくがくと痙攣して果てた朝比奈の中に、桜庭も思いきり放出した。
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