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第27話 上書き
「俺、アイツに犯られたんだよ?」
「それがどうした。お前が傷ついている気持ちはわかるが、俺にとってはそんなことは問題じゃない」
「金で買われて、たくさんの人の前で犯られたんだ……」
嫌な記憶を反芻するように、朝比奈の顔がゆがむ。
可哀想にと桜庭は思ったが、それは口に出さなかった。
同情でかける言葉など、朝比奈に必要ない。
必要なのは、前を向くことだ。
「そんなこと思い出さなくていい。忘れろ」
「無理だよ。今でも思い出すと吐くほどリアルに覚えてる」
「無理でも忘れろ! 過去なんて生ゴミと一緒だ。俺は陸を大事にする。俺のことだけ考えろ」
「俺なんて大事にされる価値なんて……」
「俺なんて、と言うな! 価値ならある! 愛してると言っただろう!」
朝比奈は、ショックで何も考えられなくなっていたが、ぼんやりと強姦された事実を桜庭が知ったのはいつだろうと考える。
桜庭の様子がおかしかったのは、もう随分前のことだが、あの時だろうか。
それでも、桜庭は昨晩まで何も変わらず、抱いてくれてたな……と思い出す。
嘘や隠し事を何より嫌う桜庭が、朝比奈に言えなかったのは、傷つけないように大事に思ってくれていたからだろう。
それぐらいの判断はできた。
「総一郎、ごめんね。そんなに俺のこと好きになってくれたのに、俺のカラダは汚い……汚れてる」
「汚くなんかない。そんなことで陸は汚れない」
桜庭がきつく抱きしめて諭しても、朝比奈は腕の中で激しく首を振る。
「消えないんだ……あの時の記憶が」
「消えないなら、俺が消してやる」
「無理だよ……記憶を消すことなんて、できるはずない」
「無理じゃない。できる! 上書きしてやる!」
「上書き?」
「そうだ。ちょっと来い」
震える朝比奈を引っぱって、桜庭は仕事部屋へ連れていく。
こういう展開になることを予想して、桜庭は考えていたことがあった。
毒を以て毒を制す、とでもいうような、いちかバチかの方法だが、セックスの嫌な記憶を消すにはセックスで上書きするしか桜庭には思いつかなかったのだ。
広いデスクの上には設計に使っているパソコンの大きなモニターが置いてある。
桜庭は社長が座るような肘掛けつきの事務椅子に座ると、朝比奈を膝の上に座らせて、後ろから片手で抱いた。
パソコンを操作して、ファイルをクリックすると画面いっぱいに動画が映し出される。
「総一郎、これ……」
「クリスマスに撮ったやつだ」
画面の中で桜庭と朝比奈が、全裸でもつれている動画。
朝比奈が桜庭の顔をまたいでよつんばいになったところが、アップで大写しになっている。
酷く傷ついているところへ、自分の性的な動画を突然見せられて、朝比奈は真っ青になって顔をそむけた。
「嫌だ……見たくない! やめてよ!」
「だめだ、ちゃんと見ろ」
桜庭は後ろから朝比奈の頭を押さえつける。
「どうして、こんなの見せるの」
「上書きだと言っただろう。俺にされていることをよく見るんだ」
ショック療法か……と朝比奈は、ぎゅっと閉じていた目をおそるおそるあけてみる。
桜庭は朝比奈の尻を両手でつかんで左右に開き、その中心に舌を這わせている。
画像の中の桜庭は、楽しそうな顔をしていて、朝比奈は胸が痛む。
汚いのに……と申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「恥ずかしいよ……」
「俺はもう何度も見てるから、陸のアソコは見慣れている。今更恥ずかしいもないだろう」
桜庭が舌をすぼめて、蕾の中へ差し込んでいるところを見て、朝比奈の体がぶるっと震えた。
「陸のカラダはきれいだ。俺がああして中まで舐めてきれいにしてやっただろう」
桜庭が朝比奈の耳元で言い聞かせるように囁く。
「陸にあんなことをするのは俺だけだ。これからもずっとな」
執拗に舌で犯されているところを見せられて、朝比奈は体が熱くなってくる。
「今から陸を抱く。上書きできるかどうか、俺に抱かれてみろ」
桜庭は朝比奈のシャツのボタンをはだけ、下は全部脱がせてやる。
デスクの上には、こうすることを予定していたようにローションが置いてあった。
桜庭は膝の上で画面の方を向いている朝比奈の足を開かせ、後ろから膝裏を抱えた。
そして肘掛けの上に足をかけさせ、M字開脚させてしまう。
朝比奈が不安そうに振り返る。
「するならベッドに行こうよ……」
「ダメだ。ここでする」
「どうして」
桜庭は質問には答えず。動画の再生を止めた。
それから別の操作をすると、今度は画面いっぱいにM字開脚している朝比奈の今の姿が、鏡を見ているように映し出される。
パソコンのモニターには、カメラがついているのだ。
朝比奈は急に我に返って、抵抗する。
「嫌だよ! どうしてこんな酷いことするの」
「いいから画面見てじっとしてろ。目を閉じるなよ」
桜庭は暴れる朝比奈を後ろから羽交い締めにして、強引に後孔に指を突っ込んだ。
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