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第28話 見せる
「俺はな、女とセックスしている時に、理解できないことがあった」
後ろをほぐしながら桜庭は関係のない話をして、朝比奈の気をそらした。
「お前は女とヤったことがあるかどうかしらんが、女を抱く時俺からは全部見えてるんだ。こうやって突っ込んでいる部分も」
桜庭はこれみよがしに、指を出し入れする。
「なのに、女はセックスの間、目を閉じてる。俺を見ていない。目を閉じて妄想の中の誰かに抱かれてるんだ。別に俺じゃなくてもいいんじゃないかと、いつも思っていた」
なんとなくだけど、桜庭の言いたいことがわかるような気がして、朝比奈は画面の中の自分を見つめる。
桜庭が自分の恥ずかしいところに指を突っ込んでいる映像から、目をそらすのをやめた。
桜庭という男は、現実的な男で夢を見るタイプではない。
見たくないものにフタをするタイプでもない。
むしろ現実を目の前にさらけ出して、見せようとしているのだろう。
「陸、お前は男だから、目を開けて俺と同じものを見ろ。俺からはいつもこんな光景が見えている」
桜庭は指を増やして、ずぶりと突っ込む。
こんなに醜悪な光景が見えていると思うと朝比奈は泣きたくなるが、思えば自分もかつて男を抱いた時にはいつも見ていた光景だ。
抱かれる側に回ったから目をそらすというのは潔くないように思える。
突っ込まれているのを見るのは怖いと思うのは、あの時のことを思い出すからだ。
だけど、突っ込んでいるのは得体の知れない男じゃない。
桜庭だ。
最初は動揺していたから、酷いことをする、と思ったが、見慣れてくると心が落ち着いてくる。
桜庭が後から抱きしめてくれている。
怖くない。
愛されてるじゃないか、俺。
そう思うと、朝比奈は画面から目が離せなくなる。
目をそらせば、またきっと恐怖に襲われる。
嫌な記憶を頭から追い出すように、桜庭のしていることだけを見ようと集中する。
桜庭は朝比奈の腰を持ち上げると、自分もズボンと下着を脱いだ。
雄々しくたかぶった桜庭のモノが、画面に大写しになる。
「画面で見るとデカく見えるな」
桜庭が照れかくしにそう言って笑うと、朝比奈もようやく少しだけ笑みを浮かべた。
桜庭が今から見せようとしている意図がわかったからだ。
結合しているところをきっちり見せて、上書きしようと考えたのだろう。
セックスには照れのない桜庭らしい、と朝比奈は思った。
腰を浮かすように言われて、素直に従う。
桜庭はローションを足して、自分のモノを突きつけた。
「挿れるぞ。しっかり見てろよ」
朝比奈が小さくうなずくと、桜庭は下からわざとゆっくり挿入する。
「あ、あ……総一郎のが……」
「俺だけが繋がるところをいつも見ているなんて、不公平だろう? 二人でセックスしているのに」
いつもの朝比奈ならとてもじゃないけど見られた映像ではないが、朝比奈は必死になって目を開けてそれを見ていた。
そうしていれば、本当に上書きできるような気がしてきたからだ。
根本まで押し込むと、桜庭は朝比奈の頭を片手で振り向かせると、深くキスをする。
目を閉じてキスをしていても、今見た結合部分の映像が朝比奈の脳裏に生々しく再生される。
朝比奈は自分が今桜庭に抱かれていることを、いつもより強く実感していた。
現実に桜庭に突っ込まれている感触と映像がシンクロして、痺れるような快感が一気に広がっていく。
視覚の効果というのはやはりあるようだ。
「総一郎が、俺の中に入ってる……」
すがるように桜庭の顔を見上げると、桜庭は普段見せたことのないような穏やかで優しい微笑みを返す。
「お前は俺としているところだけ覚えていればいい。気が済むまで何度でも上書きしてやる。遠い過去の記憶なんか、塗り替えればいい」
桜庭はまた朝比奈の頭を画面に向かせると、ゆっくり抜き差しを始める。
ぬっ、と現れては埋め込まれる桜庭のモノを見ながら、朝比奈の体が震える。
「気持ちいいか」
「いい……すごい……あんな大きいのが……」
「お前はこうされるのも好きだろう?」
「や、回し、たら……ひ、ろがるっ」
「広げてるんだ。いつもこうやってな」
ぐりぐりと腰を回すと、朝比奈の体がのけぞる。
「これも好きだろう?」
腰を動かしながら、朝比奈のモノを優しく握り、先端をぬるぬると指で刺激する。
もう片方の手で、乳首を弄ると朝比奈が乱れ始める。
「あ、や……イクっ、イっちゃうよ……」
「先に1回イけ。俺は後だ」
少し腰を強く動かしながら、手の中のモノを2、3度扱くと朝比奈はびくびくっとあっけなく達してしまう。
勢いよく白い液がデスクの上まで飛んだ。
「見ろ、アソコがヒクヒクしてるぞ」
桜庭は意地悪く手の中のモノをいじりながら、下品な言葉を吐き、さらに奥を突いてやる。
「やっ……総一郎の変態っ!」
朝比奈が怒ってぎゅっと後孔を締めると、桜庭がうっ、とうめき声をあげる。
朝比奈が少しずつ元気を取り戻しているように、桜庭には見えた。
「俺も陸のこんな格好見てたら、もうイきそうだ」
浅くピストン運動をすると、桜庭のモノが朝比奈の中で一段と膨れあがる。
「中に出していいか」
桜庭が低く囁くと、朝比奈は背筋を震わせた。
桜庭の頭の中には、朝比奈がどんな言葉攻めに弱いのか、ちゃんとリストアップされている。
朝比奈が中に出す、という言葉で感じるのは承知の上だ。
「出して……総一郎がイくところ、見ててやる」
朝比奈にやっといつもの笑顔が戻りつつある。
あと一歩。
桜庭は自分もイくために、本気で突き上げ始めた。
快感がせり上がってくる。
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