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第30話 食事会

 後日、桜庭と朝比奈は連れだって、立石のところに挨拶に行った。  桜庭は立ち直った朝比奈を立石に見せたかったし、朝比奈は立石に礼を言いたかった。  自分のために周囲が動いてくれていたことを、ありがたいと思う。  立石と三人で食事をしているところに、月島もやってきた。  事件に関わった刑事と朝比奈を会わせても大丈夫だろうかと桜庭は少し心配したが、朝比奈は平気だと言った。  月島は本当はこんな事件の管轄ではなく、しかも警視庁の中ではエリートで、今回の事件には好意で動いてくれたのだと立石から聞いていたからだ。  月島にも礼を言いたかった。  四人顔を合わせると、全員ゲイ。  その中で、桜庭だけが新米ゲイ。  ……というメンバーで鍋を囲んだ。  立石と月島は、酒が入るとプライベートな下半身の話を平気で始めてしまう。  今日はこのあと僕と寝ないか、と月島が誘えば、立石はお前とは二度と寝ない!などと笑って言い返している。  なんでも、昔、立石がストレスがたまった月島に同情して一緒にホテルに行ったら、あっと言う間に手足を縛られて好き放題されたらしい。  タチが縛られて犯されるなんて、前代未聞だ、と立石は他人事のように言って笑った。  朝比奈もそのテの話には慣れているのか、楽しそうに会話に参加している。  桜庭は、微妙な顔をして、一人おとなしく酒を飲んでいた。  立石と月島は恩人だが、朝比奈までそっち側に行ってしまうと、なんとなく疎外されているようで面白くない。  男が男を好きになることがある、ということは理解できても、ゲイの倫理観はまだまだ桜庭にはハードルが高い。  スポーツにでも誘うように他人をセックスに誘うな、と月島に説教したい気分だ。  四人のうち二人が宇宙人なので、せめて朝比奈には宇宙人に染まらないで欲しいと願ってしまう。 「陸くん、よくこんな堅物の男をつかまえたね。どこが好きなの?」  遠慮のなくなった立石が朝比奈に聞くと、朝比奈はニッコリ笑って桜庭の顔を見る。 「エロ魔神なところ」  桜庭は、飲みかけた酒を吹き出すほどゲホゲホとむせかえる。 「いいねえ、エロ魔神。最近ストレスたまってるから、ちょっと貸してくれないかな」  月島がからかうと、ダメです、と朝比奈は笑顔で返事をしている。  当たり前だ、貸し借りなどされてたまるものか、と桜庭は憮然とした顔になる。  縛られて好き放題されるなんて、冗談じゃない。 「じゃあ、陸くん、僕とどう? 僕は両刀だから、どっちでもいいよ」 「ダメです!」  今度は桜庭が月島をにらむ。 「なんだか最近僕の周りのカワイコちゃんは、みんなノンケのダンナがついてるような気がするなあ」  月島は誰のことを思い出したのか、ため息をつく。  これで三人共にお断りされた月島だった。  美形ではあるが性格に難ありだ、と桜庭は思う。 「でも、よかったじゃないか、陸くん。立ち直れたみたいで、安心したよ。桜庭くんの愛のチカラかい?」  立石がそう言うと、朝比奈はまたニヤリと笑って、桜庭をチラっと見た。 「どうやって立ち直らせてくれたと思います?」 「馬鹿っ! 陸っ!」  何を言い出すんだ、と桜庭はあわてて朝比奈の口をふさぐ。  しかし朝比奈が言わなくても、立石と月島が顔を見合わせてほとんど同時に口を開いた。 「上書きだな!」  桜庭はその日、三人のゲイにさんざんエロ魔神扱いされて、自分を見失いそうになった。  愛があっても、新米ゲイの道は厳しい。  【愛ならある!2 ~愛が試される~ End】    友情出演:月島左京(刑事は参考人にキスをした2より)

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