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第34話 独占欲

 その晩、朝比奈は帰宅した桜庭に、立石からの仕事を受けたことを話した。  今までも桜庭の仕事の手伝いをしてきたことはあったが、最初から二人で仕事を受けるというのは初めてだ。  やり甲斐があるし、楽しみでもある。  桜庭なら、きっとデザイン通りの完璧な設計をしてくれるだろうと思うと、安心して仕事ができる。 「それと……この間の話なんだけど」 「なんの話だ」 「会社を株式にするっていう話」 「ああ……まあ、急ぐ話ではないんだけどな」 「でも、総一郎の気が変わらないうちに、きちんと話しておこうと思って」  立石と話してみて、朝比奈はほとんど気持ちは決まっていた。  うやむやにしていて、桜庭の気が変わってしまう方が怖い。  せっかく、真剣に考えてくれたのだから。 「俺、総一郎と一緒に仕事していきたいし、出資もしたいと思う。それで少しでも役に立てるなら」 「そうか」  桜庭は少しほっとしたような顔になり、朝比奈を抱き寄せた。 「陸がそうしてくれたら俺は助かる。だけど楽な商売ではないぞ。儲かるかどうかも、俺自身まだわからないし」 「わかってる。頑張るよ。一緒に」  リビングのソファーで、抱き合ってキスをする。  約束のキスのような気がして、朝比奈は胸が熱くなった。  熱いキスが唇を離れ、首筋に降りてくる。  シャツ越しに桜庭の指先が、乳首を探り当て、朝比奈はピクン、と反応した。  桜庭は朝比奈をソファーに押し倒して、シャツのボタンに手をかける。 「立石さんも、そうした方がいいって賛成してくれた」 「話したのか?」  桜庭が少し怪訝な顔になり、手を止める。 「うん、先のことをきちんと考えておいた方がいいって……仕事、協力してくれるって言って……あっん……」  乳首に唇を落とされ、朝比奈は目を閉じた。  吸い付かれ、舌先で転がされると、じん、と腰まで痺れるような快感が広がる。 「総一郎、あ、待って、あん、するならベッドに……んっ」  起き上がろうとする朝比奈を押さえ込んで、桜庭はしつこく乳首を愛撫する。 「ねえっ、そ、いちろっ、ここでする、のっ」  唇が塞がっている桜庭は、朝比奈の質問には答えず、ねちねちと乳首を虐めながら下半身に手をのばす。 「あっやっ……ダメ、ああんっ」  すでに濡れていたモノの先端を指先で優しく擦られ、朝比奈は背筋を震わせた。  ここのところ桜庭がずっと忙しかったから、落ち着いてセックスはしていない。  少し触れられただけでも、感じてしまう。 「陸……今日は、挿れてもいいのか?」 「ん、ベッドに……んんっ……」  唇をふさがれ、今度は敏感な場所をぐりぐりと指で虐められる。  桜庭は身をよじって逃げ出そうとする朝比奈を抱き上げてベッドに運んだ。  バサバサと衣服を脱ぎ落とし、襲いかかるように朝比奈に覆い被さる。 「陸……」 「何?」  桜庭は一瞬何か物言いたげな表情になり、それから貪るように唇を重ねた。  唇が首筋に移動して、きゅっと吸い付かれる感触に、朝比奈はピクリと身体を震わせる。  ひとつ、ふたつ、ときわどい場所に、所有の印が刻みつけられていく。  左右に赤い印を散らせた唇が、耳元を這い上がりぴちゃ、っと耳の穴に舌が潜り込む。 「ひ、あっ、総一郎っ」 「陸……お前は俺のものだろう?」  低く詰問するような声に、朝比奈は一瞬固まった。  静かな囁きに、何か違和感を覚える。  何か怒ってる……?  問いかける間もなく、乳首にきゅっと吸い付かれ、朝比奈は小さくのけぞった。  舌先で転がしながら舐め回されて、背筋から腰まで快感が広がる。  何度も両方の乳首を行ったりきたりしながら、桜庭は朝比奈のモノをそっと握り、先端を指先でなで回した。    桜庭の指に、敏感な箇所ばかりを執拗になで回され、朝比奈は悶える。  イきそうなぐらい感じているのに、扱いてもらえないのでイけない。  乳首と下半身の神経だけが、どんどん鋭敏になっていく。 「ああっ、も、やっ、総一郎っ」 「イきたいのか?」  桜庭は薄い笑みを浮かべ、身体を起こすと、朝比奈の体をひっくり返した。  ぐい、と腰を抱きかかえ、無理矢理四つん這いにさせる。  朝比奈が涙目で、うらめしそうな顔をして振り返った。 「もっと足を開け」  低く命令されて、朝比奈はおずおずと足を開く。  ほんの時々だけれど、桜庭はひどくヒステリックにしつこく朝比奈を抱くことがある。  ストレスが余程たまっているか、何か言いたいことが言えない時だ。  多分、今は後者なんだろう、と朝比奈は予測しているが、こういう時は逆らわない方がいい、と知っている。  桜庭の気の済むようにしてくれたらいい。  どんな形でも、欲望をぶつけられるのは、朝比奈にとっては嬉しいことなのだ。

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