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第12話 優しくほどいて(後編①)

「んっ……」  ゆっくりと次第に深くなっていくキスに、結はとろりと瞳を潤ませた。  もっとキスが欲しい。たくさん直人を感じたい。  ねだるように直人の首に腕を回すと、いっそう甘いキスの応酬が返ってきた。合間に囁くように名前を呼ばれて、見つめ合ってまたキスで愛し合う。  与えられる温かでしっとりとした薄い皮膚の感触は、それだけで結の心をときめかせ、全身を熱くさせた。    止まないキスはそのままに、するりと移動した直人の指先が、結のささやかな胸の突起を浴衣の上から探し当てる。  直接ではない、もどかしい感覚に僅かに身じろぐ結に、名残惜し気にキスを離した彼の唇が、顎から首筋へと愛撫の場所を変えた。  割り入ってきた手にぐっと襟の合わせを広げられ、大きくはだけて露わになった胸の小さな尖りに、ちゅっと熱い唇が触れる。 「ひゃ……あっ」  びくんと体が跳ねて思わず飛び出た嬌声に、直人がふっと微笑みの吐息を漏らした。  その吐息にすら、感じやすい結の体は快感を拾ってしまう。肌を震わせ、身をすくめる結の、花びらのように淡く彩づいたそこに、もう一度彼がキスを落とした。 「んんっ、くすぐったい……」   「それだけじゃないでしょう?」  直人の唇が触れるたびに反応してしまうのが恥ずかしくなって、言い訳のつもりで言った言葉は、結を可愛がる術を心得ている恋人の前では何の効力も発揮しない。  それどころか、彼の嗜虐心を煽ることになっていることなど、結は夢にも思っていなかった。    ぷつ、と期待するように主張した突起に、ねっとりと柔らかな舌が絡んでいく。  舌先で転がされたかと思えば優しく吸われ、もう片方の手の親指で捏ねられて、そのたびに疼くような歓びが体中を駆け巡る。  不規則な胸への愛撫に翻弄されていると、正中線をたどるように降りていったキスが、結の浅い臍の窪みにも落とされた。 「ふっ、ん……」  唇を押し付けられて、びくりと腰が浮き、息が漏れる。 「結はお臍も感じるんだよね。可愛い」   「そんなこと……」  慌てて否定しかけて、見返した先の色っぽい眼差しと視線がぶつかった。  かあっと頬が熱くなるのを感じながら、結は恥ずかしさにそっと目を伏せる。    彼の手で、唇で、触れられたところから溶けてしまいそうなほど気持ちよくて仕方ない。キスも胸への愛撫も初めてではないのに、どんな些細な刺激にも体が熱く反応し、心まで絡めとられていく気がした。  休むことなく、薄い腹部に優しい唇がキスを落としていく。  高鳴る鼓動と、与えられる快感の狭間で泣きそうになっていると、愛撫を止めた直人が潤みきった結の瞳を覗き込んできた。 「平気? どこかつらい?」  目じりに溜まった涙を優しく指で拭って、涼やかな瞳が結を捉える。心配そうな恋人に、結は小さくかぶりを振った。 「違うの……。なんか全部……っ、気持ちよすぎてどうしようって思ったら、泣けてきちゃって……」   「……それって……」  震える声で答えると、悩ましげにため息をついた直人が結の首元に顔をうずめた。  覆いかぶさるように重なった恋人の体の重みが少しだけ加わって、そわそわと落ち着かない。 「……っ、直人……さん?」  そのまま動きを止めてしまった恋人に、どうしたものかと目を見張った。  首元にかかる彼の息づかいが熱い。   「それってつまり、感じすぎて怖いとかいう、その類の涙ってことであってる?」  何か確信めいた表情を浮かべて顔を上げた彼と視線が合わさった。 「……う、たぶん。上手くは言えないけど、詳しく説明するならそういうことになる……かも」  冷静な口調の直人の指摘に一瞬考えて、その意味を改めて自覚した結は、恥ずかしさに耳まで赤く染めながらもなんとか声をふりしぼった。 「結、それ、反則……。かわいすぎ……」  再び大きくため息をついた直人が、こつんと額同士をくっつけてくる。その仕草にきゅんと心を引かれたが、心を鬼にして彼の胸に手を押し当てた。 「かっ、可愛いってだって……、俺はただ正直に……っ」   「うん、分かってる。感じやすい結のことだから予想はしてたけど……、ここまでだったとはね」  結の僅かな抵抗などもろともせず、熱くなった頬に柔らかなキスを落としながら、直人が意味深な言葉を並べる。 「でもね、結。まだまだ先は長いって知ってた?」   「それくらい俺だってわかってる……っ」  どこか楽しそうに囁いた恋人が、切れ長の目を細めた。  結が少しムキになって唇を尖らせると、全部話し終える前にキスで言葉を奪われた。  まるで果実にかぶりつくような、求められる甘いキスに、一瞬にして体は熱をためていく。うっとりと瞬きをして、またじわりと視界が潤んでしまう。  ゆっくりとキスをほどいた直人が濡れた唇を舐めて、結の下腹部へと視線を寄せた。 「そろそろ解いてもいいかな。結のここも、窮屈そうにしてるしね」  彼の長い指が結の薄い腰をたどって、煌めくビジューのすぐ下の膨らみへと近づいていく。  純白の生地をいっぱいに持ち上げて、いつの間にか零れ出ていた蜜で濡れ、透けてしまった部分を、つつ、と撫で上げられた。 「ふあ……っん」  ぴくんと腰を震わせて、結の口から甘い声が漏れる。  早く解いて、じかに触れてほしいと願う。切ない思いとともに、直人を見つめた。  けれど、結の思いとは裏腹に腰でむすばれた紐に指を掛けて、リボンを半分解いたところで、ピタリと直人の手が止まった。 「ああ、でも……。こんなに似合ってるのに、全部脱がせるのは勿体ないな」  いつになく冷静な恋人の、思いがけない言葉に、結は濡れた瞳を大きくした。  冗談かと思ったが、そう話す彼の顔は真剣そのものだ。 「どうして……っ、恥ずかしいから取ってよ」  半ば訴えるように言って頬を染める結に、ふっと微笑みが返される。 「せっかくの綺麗な結を、もっと見ていたいからなあ。……やっぱり解くのは片方だけにするね」   「……っ、直人さんのいじわる」   「可愛すぎる結が悪い」  さらりと結の願いは却下された。  こういうときの直人は少し強引だと思う。  けれど、向けられる眼差しも囁かれる声も触れる手も全てが優しく、どんな彼でも受け入れたくなるから不思議だ。  宣言通り、ビジューが輝く純白の下着の片側だけ紐を解いた直人が、満足そうに目を細めた。  腰に感じていた拘束感が消え、一応確認のためにと顔を起こして見た自分の下腹部の危うさに、目を疑いたくなった。  片方だけ紐が解かれて、熱を溜めきった中心が、かろうじて布で隠されている状態。  一言でいうなれば、とても煽情的だと結は思った。そこだけ自分ではない気さえする。 「本当に、このまま?」  質問に当然というように頷かれて、拒否権は自分にないことを思い知る。  くすりと口角を上げた直人の手が、諦めに天井を仰ぐ結の頬をそっと撫でて、視線を彼へと誘われた。真っすぐに向けられた眼差しは、いつだって溶けそうなほど柔らかだ。 「結、ここからは結が初めてのことばかりだと思うから、つらくないようにアイテムを使わせてくれる?」  結の手を取って、視線はそのままに指先へとちゅっとキスを降らせながら聞いてくる。 「アイテム?」 「うん。って言っても、代用でしかないんだけど……」  少し待っててと呟いた直人が、ベットから離れていった。  起き上がって乱れた浴衣を手繰り寄せ、居間へと消えた彼の姿を追う。ガサガサとビニールが擦れるような音がして、戻ってきた彼の手には小さな瓶が掴まれていた。 「それ……、蜂蜜?」 「当たり」  瓶の中の琥珀色をした液体を見つめて、睫毛を瞬かせる結の隣に座った直人が、小瓶の封を切り蓋を開けた。  甘い香りと一緒に、ふわりとほのかな花の香りが鼻をくすぐる。 「なんで蜂蜜?」  首を傾げる結を前に、彼が艶めいた色を涼しげな瞳に浮かべた。その理由が思い当たらず、小瓶と直人の顔を交互に見やる。 「前に、ケーキに入れる蜂蜜が欲しいって言ってたでしょう? 露天風呂に行ったときに、売店に並んでいるのを見つけてね。地元の養蜂場で採れた百花蜜だって。結が喜ぶかなと思って買ったんだけど……。まさかここで使うことになるなんてね」   「……使うって、これを?」   「そう。これを」   「……え、あっ……、えっ!」  必死で考えを巡らせて、やっとその用途に行きついた。  けれど、結が声にするよりも先に直人によって再び押し倒され、弾力のあるベットの大きなクッションに華奢な体は受け止められた。 「結のここにね」  混乱する頭に、直人の低く柔らかな声が響く。  体の隅々まで浸潤していくような響きに、思わず肩を震わせていると、すっと逞しい腕が伸びていって、白く柔らかな双丘の狭間を長い指が優しくなぞった。  ゾクゾクとした感覚が体を駆け抜け、腰が跳ねる。 「んっ、でも……。食べ物を使うなんて……、ちょっとだけ悪いことしてる気分」  直人の手の上の小瓶を申し訳なく見つめて、ささやかに訴えてみた。恋人がふっと優しく笑う。 「結らしいね。だけど、ローションの代わりになりそうなものが他に見当たらないから。今回だけ、ね?」   「うん……」  低く優しい声で結へ向けられた気遣いで溢れた説得に、抗うことはできない。  甘んじて受け入れたのと同時に、これから起こるだろうことへの期待と不安で、心の中がざわめき立つのを感じた。  気付かないうちに胸元に掛かった浴衣の生地を握りしめていたようで、その手の甲に直人が優しくキスを落とす。 「その前に、少しだけ味見しようか」  結の手から離れた唇がにこやかに言って、ベットに置かれた小瓶の蜂蜜を指ですくった。琥珀色をまとった指先が結の唇へと近づいて、吸い寄せられるようにそっと含んでいく。 「美味し……っ」  芳醇な甘さが口の中に広がり、花の香りがほんのりと鼻腔に抜ける。  その味に、思わずうっとりと瞳を和らげていると「俺も」と、短く呟いた直人の顔が目の前に迫った。  かと思うと、またたく間に結の薄い唇は奪われていた。  吐息ごと食むように包み込まれ、優しく押し入ってきた舌に、蜂蜜の味が残った甘い唾液を絡めとられる。  隅々まで味わいつくされて、きらめく糸を引きながら唇を離した彼が、艶然(えんぜん)とした微笑みを浮かべた。 「うん、美味しいね。蜂蜜も、結も……」  嵐のようなキスの余韻で呆然となっている結の耳に、直人の低音が囁き込まれ、きゅうっと熱い痺れが下腹へ溜まる。  快楽に潤んだ瞳で見下ろす彼の瞳を見つめると、またすぐに深いキスが降ってきた。  どちらからともなく求めあうキスは、ずっとこうしていたいと思うほど、結の全てを甘く溶かしていってしまう。 「んっ、ふ……」  ちゅっと音を立てて離れたキスを追うように吐息が漏れる。熱く濡れた唇を直人の舌がひと舐めして、彼の長躯が脚の間に割り込んできた。  浴衣でかろうじて隠されていた下腹部が見事に露になる。  首筋へキスが落ちて、結の肌の上を唇や舌先が進んでいく。  大切に、丁寧に、慈しむようにして施される口での愛撫に、快楽に弱い結の体はあっという間に焚きつけられてしまった。  降りて行った彼の頭が小さな臍を通り過ぎ、かかる息にもゾクリと感じ入っていると、力強い手によって、ぐいと片脚を押し上げられた。  (もも)に触れる、彼の手が熱い。   「やぁ……んっ」  恥ずかしい場所を全て晒すような体勢に抵抗を示す間もなく、恋人に内側の薄い皮膚を吸い上げられて、代わりに愉悦の甘い声が漏れた。  片方だけ紐が解かれ、ただの飾りとなってしまった煌めく下着はすっかりずれて、熱く張り詰めた結の中心へと恋人の視線が注がれる。 「ごめん。ここも早く触ってあげないといけないね」  涼やかで優しい瞳の奥に、熱っぽい色をたたえた彼が、ふ、と微笑みを零した。  大きな手が期待に満ちた結のものをやんわりと包み込む。 「……っ!」  ただそれだけなのに、ビクンと大きく腰が跳ねてしまう。  だが勘のいい恋人の指先は容赦なく、濡れそぼった先端を分からせるようにくるくると円を描いて、さらに快感を引き出そうとする。 「あっ、やあっ……」   「ん、いいよ。我慢しないで、このまま一度イこうか……」  切なくあげた結の声に、直人の甘い囁きが重なった。下腹の奥にゾクゾクとした感覚が広がって、かあっと体温が極限まで上がっていくのを感じる。  されるがままに彼の愛撫を受け入れ、息を荒く喘がせていると、結の中心を扱う手が遠慮のないものへと動きを変えて、あっという間に絶頂へと導かれてしまった。   「はあっ……、んんんッ」  波打つ快感が昇りつめた中心から全身へ走り抜け、足先がぎゅうっと丸まって、視界に星が散る。  放ちきれなかった熱を押し出すように腰を震わせていると、零した蜜を受け止めた直人の手に優しくなだめられた。 「可愛い結。気持ちよかったね」  蕩けた視線の先で、いとおしむように恋人が脚へキスを落とす。それにすら、達したばかりの敏感な体は素直に反応し、幸せな吐息をもらしてしまう。  ちゅっ、ちゅっとキスが弾ける音と、彼の男らしく形の良い唇が肌を通る感触は、結の心に温かな至福を与えた。   「直人さんの手……、俺ので汚しちゃった。ごめん……」  乱れた息を整えながら、涙目で話す結に優しい彼がかぶりを振る。 「結のことで汚いなんて思ったことないよ」  柔らかに微笑んだ彼が、それが当然だと言うように指に絡んだ蜜を舐めとった。端正な顔に似つかわしくない官能的な仕草に、胸が色めく。  けれど、それよりも勝った羞恥心に、全身が赤く染まった。 「っ......! そんなの舐めないで……」   「どうして? これも結の一部なのに。それよりも、たくさん気持ちよくなってるところ、もっと見せて。ほら、集中」  うろたえる結を尻目に、開かれた脚の付け根に唇を這わせた直人が、すぐ横のしとどに濡れた中心を躊躇いなく口に含んでしまった。  温かい粘膜に包まれる感触にゾクリと腰が震える。  ゆるゆると馴染ませるように動いて、脚の間から結に視線を合わせると、じゅっ、と吸い上げられて先端の敏感な部分にキスが落ちた。 「あっ……」  思わず跳ねた腰を、廻ってきた手がしっかりと捕らえる。  愉悦に色づいたそこを(くび)れまで含み、蜜を溢す先をくすぐるように舌で(えぐ)られ、結の口からは熱い吐息が漏れた。  あまりの快感に、思わず彼の少し乱れた髪へ指を差し入れ抵抗を試みたが、止まるどころか一気に根元まで銜え込まれてしまった。 「あっ、やっ……。だめ、離してぇ……」  抵抗の甲斐なく扱くように上下されて、今しがた熱を放ったばかりの場所は、再び容易く高められ張りつめていく。  またすぐに熱を放ちたい欲望に瞳を潤ませていると、察しのいい恋人がいたずらにねっとりと結を舐め上げながら、ゆっくり顔を起こした。 「またイきそう?」  どこか楽しげな彼の声に、余裕なくこくこくと首を縦に振る。 「うん。でも、今は我慢ね。次はここで、俺のを受け入れてからだよ」  ふわりと色っぽい笑みを浮かべて、気づかないうちに前から伝い流れた蜜で濡れてしまった結の秘園の縁を、直人の指がぬるりと辿った。 「ひゃあ……ん」  蜜を塗り込むように弄られて、ゾクゾクと疼くような感覚に思わず声が漏れた。  更に恋人の指が柔らかな入り口を撫でると、くちくちと小さな水音が立って、応えるように自ら収縮してしまう。  以前、直人との触れ合いで撫でられた時は、くすぐったいと思うだけだったのに。  まるで直人の指を誘いこもうとするような動きに恥ずかしくなって、結は上気した頬をいっそう赤く染めた。   「たくさん濡れて可愛いけど、つらくならないように足すね」  新しい感覚に戸惑いを隠せないでいると、優しいキスが頬に触れて小瓶の中の蜂蜜を直人が手に取った。  琥珀色の液体が、双丘のあわいをとろとろと伝い垂れていく感触に肌が震える。  指先で優しく塗り広げられて、二人の体温で温められた百花蜜が、その甘く可憐な香りを強くした。   「ゆっくり呼吸をしてて」  低く柔らかに、囁く声で言った彼が閉ざされた秘園の入り口を解くように、ぬるつく指先で撫でたり押したりを繰り返す。  そのたびにジン、とした疼きを感じて結の胸をきゅうっと切なく締めつけた。鼓動が早まる。   「な……直人さん、あのっ、なんか……」   「ん? 気持ちいい?」   「よく……わかんないっ……けど、お尻、むずむずして胸が苦しい……」  手に触れたシーツを握りしめて訴える結に、直人の指先が動きを止めた。しかし、すぐに何かを感じ取ったらしい彼が、その瞳に熱を灯した。 「焦らされるのが辛い?」  止まっていた指先が再び動き出す。自白を促すように入り口を弄られて、結は耐えきれず首を縦に振った。 「可愛い結。……指、少しづつ進めるから、頑張ろうね」  優しい囁きに、信頼と期待の眼差しで見つめ返すと、恋人の指先にぐっと力が込められた。  つぷん、と入り込んでくる感覚に、ゾクゾクと背筋が震える。  入り口の浅い場所を、何度もゆっくりと出し入れされて、内側から押し広げるようにする指先の動きに、自然と甘い吐息が漏れた。   「ん……、ふ……」   「良かった、腰が揺れてる。痛くはない?」   「うん……っ、へい……き」  熱っぽく震える声で答えた結の唇に、ふわりと優しい瞳の直人がキスを落とした。  同時に長い指が進入する深さを変えて、思わず出かかった嬌声ごと彼の唇に攫われる。  与えられるキスに翻弄されながらも、秘園の内側に感じる初めての快感を、結の体は余すことなく拾っていった。    一本の指をすんなり受け入れられるようになると、蜂蜜を更に足した彼が指の本数を二本に増やした。  漂う百花蜜の甘い香りが濃くなって、嗅覚からも愛撫されているような陶酔感に包まれる。  指の動きに合わせて、くちゅくちゅと濡れた音が聞こえる。それが自分の中からするものだと思うと、張り詰めた中心はいっそう熱をためていく。  恥ずかしいけど気持ちがいい。入り混じる感情と感覚に息を喘がせていると、差し入れられた直人の指に、ぐっと力が込められた。 「ひあっ……」    途端に今まで感じたことのない強い刺激に、ビクンと大きく背をしならせた結は、切ない声をあげた。  ビリビリとした痺れが足先まで走り、腹の奥に感じる疼きが増す。  結の反応を確認するように何度も同じ場所を指先が触れ、押し上げられるたびに腰が揺らめき、口は勝手に嬌声を漏らしてしまう。 「あっ、んんっ。これ……、な……に?」  熱を上げる体に戸惑いながら直人を見やると、涼やかな目元を色っぽく染めた彼が優しく微笑んだ。 「何って、結の良いところだよ。覚えておいてね」   「いいとこ……?」   「そう。たくさんしてあげるから、もう少し頑張ろうね」   「うっ、ふあっ……」  話している間も、結の内側を刺激する彼の指は止まらない。  囁きこまれる艶やかな低音と与えられる快感に、とろりと霞んだ意識で小さく頷くと、ゆっくりと指が増やされた。  ほぐして、拡張して、新たな愉悦を教えられる歓びに肌が粟立つ。  思わず反らした胸の小さな突起に、直人の唇が寄せられた。柔らかに転がされ、喘ぎを溢した口は熱いキスで包まれる。  優しく、甘く。  けれど、ひと時も逃れる隙も与えられない恋人からの丁寧な愛撫は、結の全てを溶かし恍惚とした世界へと導いていった。

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