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第18話 和解

「和泉。石田の話は後だ。先にお前に聞いて欲しいことがある」    滝沢が真剣な口調でそう言うと、木原はやっと恐る恐るという風情で顔を上げて滝沢の顔を見た。   「本当はこんな会議室じゃなくて、お前を食事に誘ってもっとムードのあるところで伝えるつもりだったんだけどな。お前が逃げまわってるから今ここで言う」    滝沢は照れたように苦笑して、コホンと咳払いをした。   「俺は、お前が好きだ」    木原の目が大きく見開かれた。  そして滝沢が手を置いている肩が小さく震え出した。   「僕を……好き……?」 「お前を抱いたあの晩から、俺の頭の中はお前でいっぱいだ。はっきり言って仕事も石田も今はどうでもいい。お前に避けられていたら、俺は仕事も何も手につかないんだ」 「それ本当……?」 「当たり前だ。誰が冗談でこんなこと言うか」    滝沢はまだ疑うのか、と少し拗ねたような口調になった。   「和泉。お前が迷惑だと言うのなら、俺は失恋したってお前のいい友人になれるように努力する。だから、避けるのだけは止めてくれないか、頼む」 「そんな……迷惑だなんて。だって、僕は……僕は……」 「聞かせてくれ。お前の気持ち」    滝沢が促すように言うと、木原は滝沢の胸にことんと額を預けた。  今なら言える。  やっと本当の気持ちを伝えられる。   勇気を出せ、と木原は自分を奮い立たせるように口を開いた。   「僕は……ずっとあなたが好きだったんです……」    声が震えている木原を滝沢はそっと抱きしめ、背中をさすってやった。   「和泉、いつから俺を見てた」 「二年前からずっと……」    本当の気持ちをさらけだした木原は、思い切り滝沢に抱きついた。  身体の震えが止まらない木原を滝沢も抱きしめ返す。   「二年か……もったいないことしたな。知ってたらもっと早くお前を俺のものに出来ていたのに」    どちらからともなく唇を触れ合わせ、それは瞬く間に貪るようなキスに変わっていった。  もう言葉は必要なかった。  まるでこのままセックスにもつれ込みそうなほど激しいキスに木原は身体の力が抜けてしまい、滝沢は慌てて木原を支えてやった。   「和泉……好きだ。何も心配しないで、俺を信じろ。お前の二年分の気持ちはしっかり受け取ったからな。倍にして返してやる」    滝沢はクスっと笑うと、木原の額を軽く小突いた。   「このままお前を連れて帰りたいところなんだが、お前、まだ仕事があるんだろう?」    離れ難いのは木原も同じだったが、滝沢の言う通りまだ仕事は山積みだ。   「今日、遅くなってもいい。仕事が終わったら俺の家に来てくれないか。一番大事なことだけは伝えたから、後は帰ってから話そう。いいだろう?」    木原は少し顔を赤らめて、小さく頷いた。   「じゃあ、頑張って早く仕事を片付けてくれ。待ってるから」    もう一度唇に軽く口付けると、木原は幸せそうに小さく微笑んだ。  デスクに戻ると滝沢は鞄から自宅のスペアキーを取り出し、木原のデスクに置いた。   「もし寝てたら勝手に入ってきていいから」 「分かりました」    小声で返事をすると、木原はそれきり仕事の顔に戻った。  

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