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第20話 熱情

「和泉、そろそろ続きはベッドへ行かないか……」    タオルで身体を拭くのもそこそこに、滝沢は木原を軽々と抱き上げ、ベッドの上に放り出した。  覆いかぶさるように木原の唇に熱いキスをする。  木原もされっぱなしではなく、お返しのように自分から舌を絡めて夢中でキスをしていた。  まるでヤりたい盛りの高校生みたいだな、と頭の片隅で思う。   「和泉……たまんねえ。また挿れていいか?」    子どもっぽい言葉で懇願してくる滝沢が今日は可愛く思えた。  いつも挑発的で余裕のある態度だった滝沢の新たな一面を知ったような気分だ。   「いいけど……ガキみたいだな」 「仕方ねえだろ」    木原に揶揄されて滝沢は口をとがらせる。   「こういうの、久しぶりなんだよ」 「こういうのって?」 「本当に好きなやつとヤるのなんて、久しぶりなんだ」    本当に好きなやつ、と言われて一瞬木原は固まってしまった。  滝沢は本当に自分のことを好きになってくれたのだ、と感動してしまう。   「僕は初めてかもしれない。片思いが実ったの」    春人の兄である親友に失恋したのはもう八年も前のことだ。  それ以来まともに恋などしてこなかった。   「和泉、好きだ……」 「あ……ああ……圭吾……」    低く囁くと同時に、滝沢は熱い塊を木原の中へ沈めていく。  宙を彷徨うように差し出された木原の手を取り、優しくつないで枕元に押し付ける。  さっきよりは余裕が出来たのか、木原の髪を撫でこめかみや頬に小さなキスをいくつも落としてくる。   「和泉、目をあけて俺を見ろ」    ぎゅっと閉じていた目をあけると、滝沢は刺すような視線で木原を見下ろしている。   「俺の顔を見ながらイけ」    ニヤっと笑いを浮かべ、滝沢はぐりっと木原の急所を抉った。  ゆっくりと確実に剣先をその箇所に擦りつける。   「け……圭吾っ……あああっ」 「ダメだ。目を開けろ。俺を見るんだ」    まるで魔法にかけられたように、木原は滝沢の言葉に従ってしまう。  滝沢の瞳に縛られたように見つめ合う。   「ああっ……そこ……」 「ここだろ。どうして欲しい」 「もっと……もっと突いて……」    あられもないような言葉を滝沢に引き出されてしまう。   「こうか?」 「ああっ……もうっ……イクっ」    ぐりぐりと深くえぐられ、滝沢の手が中心を握りしめた途端、また木原は達してしまった。  押し寄せる波のように身体が痺れ、下半身がびくびくと痙攣する。   「イったな」    滝沢は木原の顔を覗き込みながら、満足そうに笑みを浮かべた。   「すげえエロい顔。お前、最高」    羞恥を煽るような滝沢の言葉に、木原は思わず手で顔を隠してしまった。  見つめ合いながらイってしまうなんて、恥ずかしくて耐えられない。   「こら、隠すな。ちゃんと見せろよ」    木原の手を退けると、目から涙がこぼれ落ちた。   「和泉……お前、ほんっと可愛いな」 「馬鹿っ可愛いなんて言うな……」    顔をそむけようとする木原の頬に手をかけ、その顔を自分の方に向けさせる。  滝沢は木原の目尻にキスを落とすと、涙をペロリと舐めた。   「ほら、ちゃんと俺の方向いて。俺に抱かれる時は、まっすぐ俺を見るんだ」    再び木原は滝沢の目に吸い寄せられてしまう。  どうあがいても、滝沢には抗うことができないのだ。    ああ……そうだ。  この自信たっぷりで、まっすぐな滝沢の目に惹かれたんだ。  ずっと憧れていた滝沢の瞳には、今は自分だけが映しだされている。   「圭吾……好きだよ……キスして……」    木原は滝沢の頬に手をのばし、静かに想いを告げる。  言葉にすると、気持ちも溢れ出してしまう。   「くそっ……お前はどうしてそんなに煽るんだ」    滝沢は激しく木原の唇を貪り、もう止まれないとばかりに腰を動かし始めた。  ぎりぎりまで引き抜いては、奥深く突き上げる。   「和泉っ……和泉……」 「圭吾……んんっ……」    唇を離しては互いに名前を呼び、また深く口付ける。  何も考えられないほど求め合って、木原が何度も絶頂に達するほど二人は身体を繋げていた。   「和泉……大丈夫か」 「ん……さすがに動けない」    激しく抱き合った後だというのに、それでもまだ離さないというように滝沢は木原を腕の中に抱きかかえていた。   「水、飲みたいだろ。ちょっと待ってろ」    滝沢はやっと起き上がって台所に行くと、ペットボトルの水を二本手に戻ってきた。   「ほら。起きれるか」    木原を抱きおこして、蓋を開けたペットボトルを渡す。  木原は一気に半分ほどの水を飲み干し、またぐったりと横たわった。   「さすがにヤりすぎたか。お前、明日会社行けるのか?」 「大丈夫、午前中半休にしてきたから」 「こうなることは予想済みだったってことか」    滝沢がクスっと笑うと、木原はぼすんと枕を投げつけた。痴話喧嘩のようなやり取りすら、今の木原には幸せだ。

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