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雨に濡れた子犬だったあの子が軒下に駆けこんだ。
あの人が居なくなってから誰も招き入れたことのないこの家に、僕は彼を招いた。
古い玄関を閉めて、僕が先に家に上がると、彼の方を向いた。彼は困った様に眉毛を下げて僕を見ている。
「こっち、ついてきて下さい」
「お、お邪魔します…」
あの雨の日から少年が大人になる年月が経ったのだろう。
「風呂場、今浴室乾燥かけてるので、ここで干せばすぐに乾きますよ」
ハンガーを渡して濡れた彼の衣服を乾かすように促し、僕は藍色の浴衣を渡す。
渡された彼はまた戸惑う、その表情が可愛くてつい笑った。
「ごめんなさい。着替え、こういうものしか無くて…」
「いえ、大丈夫です」
彼が「ありがとうございます」と頭を下げる仕草を見て、そっと洗面所のカーテンを閉めた。
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