ベッドを前に岬は無言で身につけていたものを次々と脱いで全裸になり、織田をちら、と振り返った。 　その脱ぎっぷりのよさに、織田は驚いたような顔をして固まっている。 　 「どうしたんだ、男のハダカを見たら萎えたか？」 　 　嘲笑するような言葉を岬が言ったのは、引き返すチャンスを与えたつもりだった。 　やりたいという好奇心があったとしても、いざ男の体を前にしてみたら、やっぱり出来ないという可能性もあると思ったからだ。 　肝心な時にそんなことになるぐらいだったら、最初からすべてをさらけ出してしまったほうがいい。 　今ならちょっとした冗談だったと、友達に戻ることもできるだろう。 　 　織田は少しむっとしたような表情になったが、追いかけるようにバサバサと衣服を脱ぎ捨てた。 　その脱ぎっぷりは岬に負けていない。 　筋肉質で均整のとれた織田の裸体を横目で見ながら、岬はあのたくましい腕に組み敷かれたいという欲望が高まった。 　試すようなことを言ったのは逆効果だったか、と苦笑した岬を、織田はためらうことなくベッドに押し倒した。 　 　さっきあれほどの勢いで唇を奪ってきた織田は、ベッドの上では案外優しい一面をのぞかせた。 　岬の髪をそっとなでて、遠慮がちに唇を触れ合わせ、額や頬にもキスをいくつも落としてくる。 　例外を除いては女しか抱いたことのない織田は、いつも女にはこんな風にしているのだな、と岬は観察するように織田の次の行動を待った。 　 「男の手の内がバレてるってのは、照れるもんだな……」 「抱かれる側よりマシだろ」 　 　顔を赤らめてとまどっている様子の織田が可愛らしく思えて、岬は織田の頭を引き寄せると、自分からキスを仕掛けていった。 　 　たまにはこんな風に優しくされるのも悪くはない。 　山根の時もそうだったのだが、岬は今まで抱く側になることのほうが多かったので、織田が優しく与えてくれるキスに胸が高鳴った。 　好きな相手には抱かれる方が幸せを感じるものだな、とまで思ったほどだ。 　キスから一向に先へ進もうとしない織田に焦れて、岬は助け舟を出した。 　 「やっぱり無理なんじゃないのか？」 「心配するな。キスだけでビンビンだ」 　 　織田は岬の耳元でそうささやくと、下半身を押しつけて、そそり立ったモノを誇示してくる。 　 「お前とキスすると見事に勃つんだ……」 　 　織田が恥ずかしそうに告白する。 　 「ホテルでもそうだったのか？」 「初めて道端でキスした時からだ」 　 　織田がちゃんと自分に欲情しているとわかって岬は少し安心した。 　それなら、自分も楽しめるだけ楽しもう。 　さっきまでどうやって飲みに誘おうかと悩んでいたぐらいの岬にとってはチャンスなのだ。 　 　首筋に唇を押し当ててきた織田を抱きしめて、甘いため息を漏らす。 　織田の唇は丁寧に首筋を何度もなぞり、胸の突起にたどりついた。 　 　胸を弄ばれるのは好きだ。岬は分かりやすく声をあげ、身体を震わせた。 　男でも気持ちいいものは、気持ちいい。 　我慢するつもりなどないし、感じていることを織田に分からせたかった。 　抱く側に回れば相手が感じていてくれるのがわかると嬉しいものだ。 　両方の気持ちがわかる岬は、素直に奔放になった。 　 　織田は実に優等生的反応で、岬が声を上げればそこを執拗に攻める。 　両方の胸をさんざん弄ばれた岬は、ついにたまらなくなって織田を遮った。 　ベッドのわきの引き出しに手をのばし、ローションを取り出す。 　 　何をするのだろう、という目で見ている織田に、ここから先は無理だろう。 　自らの手にローションをたっぶりとたらすと、意を決して自分で後ろを解そうと指を突っ込んだ。 　 　久しぶりなので苦痛を伴うその行為を織田は心配そうに見ている。 　黙って見られていると羞恥心がこみあげてきて、目の前にあった織田のモノをもう片方の手で握った。 　 　丁寧に前戯をしてくれたお返しだ。 　岬はためらうことなく織田のそれに唇を寄せ、舌を這わせた。 　茎を扱きながら先端を口に含むと、織田はうっと声を漏らし、快感に耐えている。 　 　かなり大きい織田のそれを口で愛撫しながら、今からそれが自分の中にはいるのかと思うと、興奮を覚えた。 　急いで後ろを解すために指を増やそうとしたら、何を思ったか織田が手をのばしてその指を引き抜いてしまった。 　 「俺がやろう」 　 　一方的に咥えられていることに耐えられなくなったのか、織田は自分の指を代わりに突っ込んだ。 　最初はどうしていいのかわからずに出し入れしていたが、そのうちに岬が声を上げるとその場所を集中的に攻め始める。 　 「ここが良さそうだな……」 　 　二本揃えて突っ込んだ指で快感のポイントをぐりっと抉られて、思わず岬は小さく悲鳴をあげて仰け反った。 　いきなりすぎる強烈な刺激に、織田を恨みがましい目で睨む。 　あやうくイってしまうところだった。