14 / 40

第14話 夢にまで見たらしい

「あ……ああっ……織田……もう……」 「イクのか?」 「我慢できない……あっ……イクっ……イクっ」 「イケよ、何度でも」    ガツガツと突き上げられながら、岬は勢いよく達した。  岬が達したのを確認して、織田は岬の身体を仰向けにすると、両足を抱え上げた。  まだやめるつもりはないらしい。  喘ぎすぎた岬の目から零れ落ちた涙を、織田はぺろっと舐めとり、頬にキスを落とす。   「ギブアップか?」 「バカ言え。本気で来いよ。女じゃないんだから遠慮するな」    息も絶え絶えになりながら、岬はまた織田を煽るようなことを言ってしまう。  抱かれる側であっても、基本岬は負けず嫌いなのだ。   「言ったな」    ニヤリと不敵な笑みを浮かべた織田は、再び奥深くまで突き刺すと、腰をぐるりと回して、内壁を抉った。   「あああっ……すげえ……快いっ」 「もっとか?」 「ああ……もっと」    恍惚とした顔でもっとと懇願し、縋りついてくる岬を抱きかかえて、織田はさらに奥を抉ってやる。  気が強いのかと思えば、妖艶な表情を浮かべて素直に快感を口にする岬に、織田は夢中になっていた。  そこいらの下手な女優の濡れ場なんかよりよっぽどそそられる。  強請られるままにもっと岬を鳴かせたいと欲望がつのり、激しく攻め続けた。    絶え間なく喘ぎながら、岬はああこれが織田の本性だな、と感じていた。  獲物を追い詰めるような鋭い目。  容赦なく食らい尽くそうとする征服欲。    刑事になるぐらいだから、優しいだけの男ではないはずだった。  野性を取り戻したような織田の本性をもっと見てみたい。  織田を煽り続けた岬だが、その強がりもそう長くは持たなかった。  三度目に達した時には、織田にしがみつきながら意識が遠くなった…… 「大丈夫か?」 「そう思うなら少しは手加減しろよ……」    声が擦れてうまく出せない。  気づいた時に岬は織田の腕枕に抱かれていた。  織田はまだ息が荒く、ほんの何十秒か意識が飛んでいただけだろう。   「昔からお前は容赦なかったからな」 「本気でやらないと、相手に失礼だろう」    高校時代、剣道や柔道などの武道で織田にかなう者はいなかった。  岬も柔道の技を思い切りかけられてねじ伏せられた記憶がある。    手を抜くようなヤツではないとわかってはいたが、セックスの時ぐらいはもう少し加減しても良いのではないかと思う。  もちろん煽ってしまった岬も悪いのだが。  織田は悪かった、というように岬の腰のあたりをなでさすっていた。   「抱かれる側というのは辛いものなのか?」 「ん……そうだなあ……愛がなければ辛いだけだな」 「そうか……」    織田が不安げな顔になったので、岬は言葉を付け足した。   「でも、好きな相手なら抱かれるほうが何倍も快いぜ」    愛がなければ、という岬の言葉を気にしたのだろうか。  織田は黙って岬の髪をなで、静かに唇を合わせた。  触れるだけの優しいキスに、セックスとは違った切ない感情がこみあげる。    唇を離すと織田はぎゅっと岬を抱きしめ、お前は本当に可愛いな……と呟いた。  可愛いと言われて嬉しいわけではないが、岬は照れて顔が熱くなってしまい、織田の胸に額を押しあてた。    織田の気持ちを確かめておきたい……   「お前……俺に惚れたのか?」 「お前なあ……」    織田は呆れた、というような顔をして、ごろりと上を向き、ため息をついた。   「立て続けに2発ブチ込んで、それでもまだ抱きしめてキスして可愛いとか思ってるぐらいだから、末期的だぞ……夢にまで見たからな」    やれやれ、というように額に手をあてている織田の様子が可笑しくて、岬は思わず声をたてて笑ってしまった。   「笑うな。また襲うぞ」 「ガキだな、まるで」 「ああ、気分と下半身は高校生並みだ」    織田も笑っていた。  岬は事件が終って初めて心から笑ったような気がする。   「岬……」    織田は手のひらで岬の頬をそっと包んだ。   「好きだ……抱かれるのは俺にしといてくれないか」 「今更なんだよ。いつも勝手に俺を好きにするくせに」    本当は嬉しいのに思わず憎まれ口を叩いてしまったが、岬は照れながら織田の唇にキスを落とした。 「このまま朝までヤり続けたいところなんだが」 「冗談じゃない、朝までヤり続けたら俺が死んでしまう」 「明日朝が早いんだ。今日は帰るよ」 「ああ。シャワー使えよ。タオルは籠の中にあるから適当に使え」    名残り惜しい気もするが、織田も寝れる時に寝ておかないと、またいつ徹夜になるかわからない仕事だ。  岬も腰が立たないぐらいなので、今日は泥のように眠れるだろう。  シャワーを浴びた織田は手早く衣服を身につけると、ぐったり横たわったままの岬の頭をなでた。   「お前はゆっくり休めよ」 「言われなくても今日はもう動けない」 「おい、鍵はちゃんと閉めろよ」    言われてからそうだったと気づき、岬はのろのろと身体を起こし、シャツをひっかけて玄関に向かう織田を追いかけた。  見送ろうとすると、急に恋人に置き去りにされるような切ない気分になってくる。    本当にまた会えるのだろうか……  そう言えば、まだ自分の気持ちを伝えていなかったと思い至り、岬はあわてて織田を呼び止めた。   「なあ……俺が会いたくなったら、どうしたらいいんだよ」    また会いたいという気持ちを伝えるつもりが、どうも拗ねたような口調になってしまった。   「電話してこいよ。張り込み中でなければ時間ぐらいなんとでも都合をつける」    織田はヨシヨシと子供をあやすように、岬の頭に手を置いて笑った。  告白したのは織田のほうだったのに、どうも立場が逆転しているような気がする。  結局俺のほうが織田を好きなのだ、ということはもうしばらく内緒にしておこう。  もう織田は気づいているかもしれないけれど……   「またな」    織田は岬の頬に軽く音を立ててキスをすると、爽やかな笑顔を残して出て行った。  

ともだちにシェアしよう!