【Side Misaki】 　あの時と同じように、ホテルで織田はさっさと勝手に部屋を選ぶと、俺の肩を抱いてエレベーターに押し込んだ。 　でも、あの時とは状況が違う。 　今日は、合意の上だ。 　今からセックスをする、という合意。 「何緊張してんだよ。嫌なのか？」 　織田が笑いながら顔をのぞきこんでくる。 「嫌……じゃないけど」 　顔が近づくだけで心臓が破裂しそうに飛び跳ねる。 　好きな相手とラブホに泊まるのなんて、何年ぶりだろう。 　バンドが売れ始めてから、山根を除いては決まった相手などいなかった。 　山根に対しても情はあったが、恋愛感情ではなかったと思う。 　照れくさいのは同級生だからか？ 　それとも抱かれる側になるのは久しぶりだからだろうか。 　いや、違う。 　織田のことが好きだからだ。それもかなり重症だ。 　この一週間会いたくてたまらなかった。 　その気持ちが大きすぎて、いざ会えたというのにどんな顔をしていいのかわからない。 　部屋の扉を開けると、 「お姫様、どうぞ」 　と、織田がからかうように言った。 【Side Oda】 　岬が妙におとなしい。 　部屋の入り口で立ちつくす岬の腕を引いて、抱きしめる。 　抵抗もしないが、腕を回してくることもない。 　 　ご機嫌ナナメか？ 　さっきまであんなに機嫌良く悪態ついてたのに。 「織田……」 「どうした」 「一週間……忙しかったか？」 「ああ、張り込みでなかなか現場を離れられなくてな」 「そっか……」 　俯き加減の岬の顔をよく見ようとのぞきこむと、ふいと目をそらす。 　ああ、そうか。 　この表情は…… 「悪かったな、連絡できなくて」 「……いいよ、お前、刑事なんだし」 　岬が俺にキスをねだる。 　甘く絡みつく唇の隙間から 「会いたかった」 　小さなハスキーボイスが漏れた。 ☆ 　織田は正直なところ、今日岬を誘ってOKがもらえるか自信がなかった。 　最後に会った日、岬に告白したけれど返事はもらえなかった。 　あの時岬は織田のケガのことで責任を感じていたから、それで抱かせてもらえたのではないかと疑う気持ちもあった。 　今日は岬の口から本心を聞き出したい。 　しかし…… 　岬は意地っ張りなところがあるし、繊細だ。 　やり方を間違えると心を閉ざしてしまうかもしれない。 「岬、疲れてないか？　２ステージも歌ったあとで」 「いや、慣れてるから平気。お前ほど体力使う仕事じゃないさ」 　岬は織田に背を向けると、衣服を脱ぎ落としていく。 「抱いてもいいのか？」 「なんだよ、こんなところまで来て今更聞くか？」 「いや、疲れてるんなら別に……」 「別に何？」 　背を向けていた岬が振り返ってギロリと織田をにらみつけた。 「お前は疲れてたらやめるのかよ？」 　こういう時の岬の鋭い視線は迫力がある。 　ゾクゾクする程セクシーだと、織田は思う。 「いや……無理だな」 　織田は岬を軽々と抱き上げて、ベッドの上に放り出した。 【Side Misaki】 　織田が何か言いたそうにしているのが、正直怖い。 　今日は抱く気分じゃない、と言われるのが怖かった。 　ベッドの上で息もつけないほどのキスで織田を煽る。 　キスを覚えたての高校生のように、絡まり合って唇を貪る。 　そうしていると安心する。 　脳みそがマヒするように、キスに夢中になる。 　織田が俺の身体に溺れてくれればいい。 　俺から離れられなくなってくれるといい。 　織田の熱い唇が首筋を降りていく。 　まったく、普段結構雑なヤツなのに、こんな時は俺を壊れ物のように優しく扱う。 　髪をなでて、頬をなでて、いくつものキスを落として。 　舌先で俺の平坦な胸についてる突起を、嫌というほどころがして。 　俺がそこが弱いと織田はもう知ってる。 　俺が声をあげるたびに激しく吸い付いて、しびれるような快感を与えてくれる。 　もどかしい。 　早く……早く欲しい。 　体中の血が沸騰しそうなほど、熱くなっていく。 　 ☆ 　「もう……いいから……」 　上半身の愛撫だけでこんなに追いつめられていたら、先が持たない。 　岬がさえぎると織田はクスリと笑った。 「もういいから他の場所にキスしろって？」 　そう言うと、すでに張りつめて蜜をしたたらせている岬のモノに手をのばした。 「こっちにして欲しいんだろ？」 「馬鹿、そんなことしなくていいっ……あっ、やめっ……」 　透明の蜜を舌でペロっと舐めとると、織田は岬のそれを口に含んだ。 　飲み込みそうな勢いできつく吸い上げ、舌先で先端をぐりぐりと刺激する。 「ああっやめろって、イってしまうだろっ！やっ……ああっ」 　絞り出すような岬のあえぎ声に、織田は興奮する。 　これでもか、というぐらいに舐め回して扱いてやると、岬はギブアップした。 「織田……頼むから……まだ……イキたくない……」 「こっちでイキたいのか？」 　織田の指がうしろの蕾をそっとなでると、岬は身体を震わせた。 「いちいち……聞くな」 　顔を赤くして恥ずかしがっている岬を見ると、織田はむらむらと征服欲がわき上がってくる。 　力づくで岬をひっくり返して、四つんばいにさせて、腰を抱え上げた。 　抵抗する岬の両足を無理矢理広げさせて、両手で双丘を割り開く。 「いい眺めだな」 「見るな、馬鹿！そんなところ……あ……」 　織田はためらいもなくその蕾の中心に舌を這わせた。 　舌先をすぼめて、激しいキスのように蕾の奥へもぐりこませていく。 「あ……ああっ……や……」 　悶えるように岬はシーツをにぎりしめて、ひっきりなしに高い喘ぎ声を上げた。 　背筋がぶるぶると震えている。 「織……田……やめっ……ああ……」 　ついに岬は身体を支えられなくなり、織田から逃げ出した。 　息をきらせてベッドに横たわる岬を見下ろしながら、織田はローションを手にたっぷりと出した。 「マスターのおすすめ、良さそうだな」 　織田は少しその透明の液体の感触を楽しむように手になじませていたが、岬に休憩させる間を与えず後ろに指を突っ込んだ。 　思わず悲鳴を上げた岬を仰向けにして、足を開かせる。 　岬は織田にやられっぱなしなのがくやしいのか、顔をそむけてそっぽを向いている。 「岬、俺が欲しいか？」 「だ……だからそういうことをいちいち聞くな！」 「欲しくないのか？」 　織田は意地悪く質問しながら、指をふやしてずぶりと突っ込む。