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第19話 【番外編SS2】 逢瀬
織田と岬は両思いになった。
しかし刑事とミュージシャンという、どちらもが不規則な生活をしているため、まとまった時間会うことは難しい。
一人暮らしの岬のマンションの合い鍵を織田が持っていて、時間のできた時に会いにくる、という形が定着しつつあった。
織田はまったく神出鬼没で、いつやってくるかわからない。
朝目覚めたら夜中にやってきた織田が、床にころがって寝ているということもあった。
せめて電話ぐらい前もってかけてくれれば、と岬は思うのだが、織田から連絡があるのはたいてい『今から行く』というような突然の連絡だ。
そのたびに岬はあわてて用事を済ませて飛んで帰らなければならない。
無理はしなくていい、と織田は言うのだが、そうしないと次はいつ会えるかわからない、という刹那感が常に岬にはあった。
会えば抱き合うだけ、という関係に不安を覚えていたのは岬の方だった。
近頃は休みの日でも、家から出ずに織田の連絡を待ってしまう。
岬の休みは伝えてあるから、ひょっとして連絡があるのではないかと期待してしまう。
期待しては一日を無駄に過ごしてしまうことも多かった。
こんなことなら飲みでも行けばよかった、と一日の終わりにため息をついていたある日のこと。
深夜に岬の携帯の着信音が鳴った。
「岬……起きてたのか」
「ああ、今どこだ?」
「張り込み中で、車の中だ。交代で休憩をとってる」
「そうか……」
会いに来るという電話ではなさそうなので、内心がっかりしながらも、こうして声を聞けるだけでも岬には嬉しかった。
「疲れた声だな、寝てないのか?」
「ああ……ここ数日は帰ってない」
最後に織田に会ったのはすでに10日前のことだ。
事件があって織田が忙しいのはわかっていた。
テレビのニュースでその事件が話題になるたびに、早く解決して欲しいと岬は願っていた。
「岬、今何してる」
「ベッドの中だ、明日の現場が朝早いんだ」
「そうか、起こして悪かったな」
「いいんだ、お前のこと考えてた……」
「俺のこと? さては一人で抜こうとしてたな」
織田がフフっと笑う。
「馬鹿言え! 1人ではやってねーよ!」
「本当か? 右手と浮気するぐらいなら許すぞ?」
「しねぇよ! それに俺は左利きだ!」
電話の向こう側で織田の笑い声が響く。
「電話じゃさすがにお前を抱くこともできないな……」
織田の少し疲れた声に胸がつまる。
今すぐにでも会って抱き合えれば、少しでも事件ですさんだ気持ちは癒されるのだろうか。
電話ではつまらない悪態をついて笑うことぐらいしかできない。
「なあ岬……お前の声聞かせろよ」
「今しゃべってるじゃないか」
「そうじゃなくて、アノ時の色っぽい声が聞きたいんだよ」
「何言ってんだ、このエロ刑事! 仕事中だろ」
「頼むよ……聞きたいんだ、岬の声……」
織田は何か大きなストレスでも抱えているんだろうか。
懇願するような弱気な声など初めて聞いた。
そう言えば以前先輩の刑事が、事件で大きなストレスを抱えている時に、織田にセックスを強要したという話を聞いたことがある。
刑事にはゲイが多いと聞いたこともあるし、岬は少し織田のことが心配になる。
「……どうして欲しいんだよ」
「ベッドの中にいるんだろ? いつものパジャマだよな……ボタンはずして前はだけろよ」
「そんなことしてどうするんだよ」
「いいから言うとおりにしろって! 俺の想像を邪魔するなよ……今岬の可愛いハダカを思い浮かべてるんだから」
「わかったよ……ボタン開けたから」
「自分で乳首、いじれよ。好きだろ? 俺、いつもしつこくいじってやってるだろ?」
「は……恥ずかしいこと言うな」
「目閉じて、俺の手だと思って触れよ……つまんで立たせて、色が変わるぐらいにいじり回してみろ」
織田の言葉に赤面しながら、岬は自分で自分の身体に触れてみる。
「岬の乳首、小さくて可愛いんだよな……俺が吸いつくと真っ赤になって」
わざとなのか織田は低い声で、甘く囁くように卑猥な言葉を並べ立てる。
岬は目を閉じた。
こうしていれば織田がすぐそばにいるような錯覚に陥る。
「感じてきたか?少し息荒くなってるな……そろそろ下も触りたいだろ……もう勃ってるんじゃないのか」
「勃ってなんか……」
「嘘つけ、もう先から滴ってるだろ……指先をぬるぬるにして、円を描くみたいに親指で擦ってやるんだ……岬はそれが感じるからな」
それはいつも織田がしてくれる指使いだ……
それを繰り返されるとたまらなくなって岬は声を上げてしまう。
「織田……うっ……あ……」
「よし、ちゃんと言われたとおりやってるな……扱きながら先の割れたところに爪を立てたら、岬は悲鳴あげるんだぜ」
「そんな……こ……と……んんっ……あ……」
岬はいつの間にか夢中で自分のモノを触っていた。
織田の声の言うとおりに。
「イきそうか? まだイクなよ。お前、それだけじゃ物足りないだろ」
今にもイキそうになっているのに、織田に止められて岬は手を止める。
このままイクのは物足りないと感じていたのを言い当てられてしまった。
「ローションあるだろ、ベッドの下に。片手でも出せるだろ。たっぷり手にとれよ……痛くないようにな」
どうしようか……と一瞬迷う。そこまで一人でしたことはない。
だけど少しでも織田を思い出したい。
織田がいつもしてくれるように……
「挿れろよ……指。後ろに入れて、ゆっくり出したり入れたりするんだ」
「くっ……んん……あっ」
「自分でいいところ見つけられるか? 見つけたら遠慮なくぐりぐり擦れよ、ちゃんと広げるんだぞ、あとからもっと大きいのが入るんだからな」
「あとからって……お前……いないじゃないか……」
喘ぎながら岬は反論する。
「いいから。指、何本入った」
「2本……んっ」
「もう1本挿れろ。入るだろ」
「あああ……織田……」
思わず織田の名前を呼びながら、自分で後ろに指を突き立てる。
もう恥ずかしさも忘れて、気持ちのいい場所を擦ってしまう。
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