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第20話 寝言

「嘘……だろ……」  物音がしたと思った瞬間、玄関から織田が飛び込んできた。  スーツのジャケットを脱ぎ捨て、ネクタイを乱暴に緩めながらベッドにいる岬に覆い被さる。 「お前っ! 騙したのかっ!」  怒って暴れる岬を力一杯押さえつけて、織田は激しくキスで口をふさいだ。  織田に荒々しく口内を犯されながら、岬の抵抗する力が抜けていく。 「悪い……時間がないんだ。抱かせろ」 「来るなら来るって言えよっ」  岬は涙声で訴えた。  こんな恥ずかしいことをさせられて言うことを聞いていたのは、会えないと思ってたからなのに。 「来るつもりじゃなかったんだ。だけど、お前の声を聞いたら我慢できなくなって、車をブッ飛ばしてきた。休憩は一時間しかないんだ、すぐに戻らないと……」  織田の顔はやつれ、頬にはヒゲがのびている。  着替えていないのか、汗の匂いがする。  目だけがギラギラと野獣のように、岬を見据えている。  今は……抱かれてやるのが最優先なんだろう。 「……抱けよ。準備万端だぜ」  岬が小さく笑うと、織田はあっという間に猛った己を取り出し、岬のズボンと下着を剥ぎ取った。 「いきなり突っ込むぞ、いいか」 「準備万端って言ったろ……うっ……ああっ織田っ」 「岬……ああ……すげえ、熱い……たまんねえ」  いきなりガツガツと突き上げられ、荒々しく何度も唇を奪われる。  気が遠くなりそうな激しい動き。  岬を気遣う余裕もなさそうに、織田はひたすら自分の快感を追い求めている。  急所を抉るように突き上げられて、岬は悲鳴を上げて達してしまった。 「大声でイッたな」 「俺の声が聞きたかったんだろ」 「ああ……なんだか……お前がイクの見たら満足した……」  織田の体重がドサリと岬の上にのしかかる。  体力は限界だったのだろう。 「織田……ちょっと横になれ」 「いや、大丈夫だ。まだ終わってないぞ」 「いいから、横になれよ! 俺がやってやる」 「お前が? やってくれるって?」  体勢を入れ替えて織田がベッドに仰向けになると、岬は織田をまたいで自分で後ろに織田のモノを沈めていく。 「搾り取ってやる」  岬が挑戦的な笑いを向けると、織田は幸せそうに微笑んだ。 「ああ……こうやって下からお前を眺めるのもいいな。ここもじっくり触ってやれるし」  さっき電話で言っていた岬の喜ぶ指使いで、織田は岬のモノを触ってやる。 「あ……気持ち……いい……」  織田の指の動きに合わせるように、岬は腰を上下させる。  最初はゆっくりと、それからだんだんと加速するようにずぶずぶと織田のモノを出し入れする。  甘い声を漏らしながら、岬は腰を振ってキスをねだりにくる。 「うっ……岬……あっ……もっと……激しくっ」  織田が目を閉じて、めずらしく喘ぎ声をあげる。  そして耐えきれないというように、自分も下から突き上げ始めた。 「気持ち……いいっ? お前もっ……」  岬は息を切らせながら織田に微笑みかけて問う。 「ああ……最高」 「じゃあ、イカせてやる」  岬はニコっと笑うとぐっと下半身に力を入れて、織田のモノを締め上げた。 「うっ……岬っ、出るっ」  織田は岬の腰を抱えて下から大きく突き上げる。 「あっ……そこっ突いてっ、俺もイクから、もっと!」 「岬っイク……イクっ……ああっ」  二人ほとんど同時に果てると、織田は岬をぎゅっと抱きしめた。 「おい、苦しいって」  織田の腕から抜けだそうとするが、しっかりと抱きしめられていて動けない。 「おい……って、あれ?」  織田は寝息をたてている。  イッた途端に寝付くなんて、織田らしい。 「抱き枕かよ……俺は」  フっと笑いながらも、抱きしめられている腕の強さに岬は胸が熱くなる。  限界まで疲れていても、俺を抱くためだけに織田はここへ来たんだ。  たとえわずかの時間しか会えなくても、そのわずかしかない織田の休息時間は俺のものなんだ。 「ん……康介……」  えっ?  ふいに名前を呼ばれて岬は心臓がドキドキしてしまう。  寝言か……  一度も呼んだことのない俺の名前を、なんで夢の中では呼んでるんだ、コイツは!  誰か別の「こうすけ」と浮気でもしてるんじゃないだろうな!  なんだか幸せそうな織田の寝顔を見つめながら、もう少しでいいからこの織田の安息が続くことを願う。  しかし、あらかじめセットしてあったのか、無情にも織田の携帯のアラームが鳴った。   「ん……あれ?」  織田は目覚めた途端に、ここはどこだというように周囲をきょろきょろ見回した。 「なんだよ、寝ぼけてんのか?」 「え? ああ……いや。夢じゃなかったのか」  織田は隣にいた岬を抱きしめて、大きなため息をついた。 「やっとお前を抱けたと思ったのに、アレが夢だったら、俺、立ち直れねぇわ」 「無茶するよな、まったく。もう戻るんだろ?」 「ああ、10分でも寝たらスッキリした」  織田は本当に来た時よりはスッキリとした顔で笑った。  あのギラギラとした余裕のなさは消え失せてしまったようだ。  あわてて身繕いをして出かけようとする織田に、岬は缶コーヒーを手渡す。 「岬……ごめんな」  何に謝っているのかわからないが、織田は申し訳なさそうに岬の肩を抱き寄せる。 「いいんだ……俺、ちゃんとお前のこと待ってるから」 「ああ、俺情けねぇ。仕事なんて放り出したいよ」  名残惜しそうに抱きしめてくる織田の耳元に、岬は特別甘いハスキーボイスで囁いてやった。 「修司、頑張れ」  織田は一瞬驚いたように岬を見つめ、それから照れたように言った。 「待っててくれ……康介」  走り去る織田の車を、岬はベランダからいつまでも見送っていた。 【番外編2 逢瀬 ~End~】

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