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第25話 小悪魔
「修司……俺が気持ちよくさせてあげる」
岬は身体を起こすと、織田をソファーに座らせて足の間にひざまずき、織田のモノを手にした。
織田に見せつけるようにそれを口の中に含み、舌を這わせる。
「気持ちいい?」
「ああ……すごく」
岬がちら、と上目遣いで見上げると、織田は余裕のない顔で岬を見ている。
「修司はここが気持ちいいよね」
岬はすでに織田のツボは心得ている。
ねっとりと舌を這わせると織田がうめき声をあげた。
だめだ……
このままでは岬に追いつめられてしまう。
織田が岬のモノに手をのばそうとすると、岬がそれをさえぎった。
「待って。ちょっと待ってて」
岬は戸棚からローションを持ってきて、織田の手の上にたっぷりと注いだ。
そして自分からソファーに横になり、片膝を上げて織田を誘う。
「後ろに挿れて……前は自分で触るから」
壮絶な淫乱さだ。
岬のどこにこんな素質があったんだろう。
目の前で岬は自分のモノを自分で擦りながら、織田に向かって足を開く。
織田はあやつり人形のように、岬の言いなりになるしかない。
岬に請われるまま、織田は後ろに指を差し込んだ。
「あ……ああっ……気持ちいいっ、もっと挿れて、大丈夫だから」
岬は織田の目の前に秘所を晒して、悶えるように喘いでいる。
演技でここまでできるものだろうか……
めったにお目にかかれない岬の痴態に、織田は目が釘付けになる。
指をふやしてやると、岬は苦しそうな顔の中に恍惚とした喜びの表情を浮かべる。
「修司……ああ……すごいっ、ねえ、まだ? まだダメ? 欲しいよ……」
息を乱して切羽詰まった目で、岬が織田をねだる。
指はすでに3本飲み込まれていて、岬は露の滴る自分のモノをぐちゃぐちゃに擦りながらどんどん乱れていく。
織田はごくりと唾を飲み込んだ。
「もう挿れていいか?」
「お願い……来て」
岬はソファーから降りるとラグマットの上にひざをつき、よつんばいになって織田の方に尻を向けた。
織田はただただ驚くばかりである。
その姿勢は織田がいつも強要すると、岬は嫌がって逃げるのだ。
岬はその姿勢で振り向くと、織田に向かって天使のように無邪気な笑顔で言った。
「早く……今日は激しいのがいい」
誰だ……この小悪魔は。
信じられない思いで、織田は一気に己のモノを付き立てた。
「あああっ……すごい……すごいよ……ああっ」
岬は掠れた声でひっきりなしに喘ぐ。
煽られている織田は今にもイキそうなのを必死で我慢していた。
甘えるような岬の喘ぎ声は、いつもの挑戦的な岬とは全然違う。
「もっと……修司……もっと……奥まで突いて……」
「こうか?」
「んんっ……あああっ……そこ……すごい」
「康介っそんなに……締めたら俺がイってしまう」
「まだだよ、まだイかないで、イク時はキスしたいから」
そうだ、岬は舌を絡ませながらイクのが好きだった、と思い出して、織田は体勢を入れ替える。
いったん引き抜いて、ラグマットの上で岬を仰向けにした。
顔が見えるようになると、やっと自分が抱いているのが岬だと思い出すぐらいに、岬の演技は完璧だった。
岬は両手を伸ばして、織田の頬を挟み込むように潤んだ目で見つめている。
「康介……もういい。こんな時まで演技しなくていい。まいった。お前にはまいったよ。降参」
「演技なんかじゃないけど」
「……え?」
岬の目にほんの一瞬、挑戦的ないつもの鋭さが蘇ったような気がした。
「俺は、それぐらいお前が好きなんだ……修司」
最高のタイミングで岬の目からぽろっと涙がこぼれ落ちる。
まいった。
織田にはもうなにがなんだかよくわからない。
どっちが本当の岬なんだ。
「それなら……ずっとこのままでいろよ。こっちが本当のお前なんだろ。クールな演技してただけじゃないのか」
「さあ……どうかな」
今涙を浮かべていたくせに、岬はフっと笑った。
「お前がこっちが好みなら、このままでいてやってもいいぜ」
「ああ、そうしてくれ。俺はもう金輪際浮気はしない。お前にメロメロだ」
よしよし、と岬は心の中で密かにガッツポーズをしていた。
織田にはこの方法が実に有効だということがよくわかった。
「んっ……あっ修司……修司……愛してる……もっと」
耳が溶けそうなぐらいの岬の愛の囁きを聞ける日が来るなんて、まだ信じられない思いだった。
「康介……イキそうか?」
「ん……イクっ、イカせて……あっ……好き……修司が好きだよ……キスして……もうイクからっ」
その夜織田は、天にも昇る気持ちだった。
岬が可愛くて可愛くて、何度も貪るように抱いてしまった。
素直で情熱的で一途なのが岬の本当の姿なのかもしれない、と本気で信じてしまいそうだった。
朝、目覚めると岬が先に起きて朝食の支度をすませていた。
トーストにベーコンエッグにサラダ、とホテル並みにお洒落な盛りつけだ。
朝から甲斐甲斐しさMAXである。
昨日の約束はまだ続いているのだろうか。
このままでいてやってもいい、と岬は言ったけれど。
「お早う」
「あ、修司、起きたんだ」
機嫌良さそうな岬の返事が返ってくる。
「お前、身体大丈夫なのか?」
昨晩はさんざん抱き合ったから、岬は辛いはずなのに、と織田は心配する。
「大丈夫。なんなら朝食後はまたベッドに行く?」
岬は小悪魔のような笑みを浮かべながら、織田の首に手を回し唇にキスをした。
続いてる……
昨日のあれは夢じゃなかったんだ。
「いや……今日はちゃんと映画見ようぜ」
「ちゃんと見れたらね」
なんだか、岬は生き生きとしているように見える。
ひょっとして俺は遊ばれているんだろうか……と織田は岬の変貌に呆然としていた。
【番外編SS4 演技 ~End~】
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番外編SS4本が、時系列で本編1と2の間の出来事なので、先にアップしました。
この後、本編2部に続きます。
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