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第11話 血と想いの繋がり

 俺が人様の役に立っている間も、奴らは俺の吸血に明け暮れていた。翌日に響かないよう、加減を間違えたらお預けをくらわせると言ってやった。  それにも関わらず、ノーヴァは相変わらず俺の血を啜り放題。ヴァニルは吸血に留まらない絶倫っぷり。大人しくできたのは、初めの数日だけだった。まぁ、期待はしていなかったが。  だが、そんなヴァニルが時々、吸血だけで終える日があった。想像したくもないが、それにはきっとノウェルが関わっているのだろう。 「ヴァニル、まだノウェルにちょっかいを出してんの?」 「ノーヴァ、貴方が言ったんでしょう。邪魔者だと。だから邪魔をさせないように、私が処理しようとしてるんじゃないですか」 「そう、好きにしなよ。でもね、ヴェルが怪しんでるよ」 「はぁ····。そうですか。気をつけます」 「まったく、馬鹿でもわかるよ。絶倫のお前が血を吸ってはい終わり。そりゃ気づくでしょ」 「はは、確かに。また無理をさせてしまわないように、抑えていただけなんですけどね」 「無理と我慢は(ヴェレーノ)だよ」 「そうですね。もう少し、回数を減らしましょうか。ノウェルを犯した後は、ヌェーヴェルが壊れるまで抱き潰したくなるんです。それを抑えるのは本当に辛い」 「そういうものなの?」 「ええまぁ。まぁ、代替など無理があったかもしれませんね。私が真に求めているのは、やはりヌェーヴェルなんですね。ノウェルではない。ノーヴァにはまだ、わからないでしょうけどね」 「何だよ。子供扱いしないで」 「はは、すみません」  ノーヴァは子供扱いされるのを嫌う。見た目に反し、中身は200年を生きているのだ。多少の子供っぽさはご愛嬌。  特に、ヌェーヴェルが容姿に左右され、大人の姿の時のみ対等に扱う事が気に食わなかった。そこで、いつまでも子供扱いしてくるヌェーヴェルとヴァニルに一泡吹かせてやろうと、ノーヴァは暗躍していた。  深夜2時を回った頃、ノーヴァはヌェーヴェルの部屋に忍び込む。数時間前に、ヴァニルに気を失うまで犯されたヌェーヴェルは、今日も今日とて死んだかのように眠っている。  これは好機(チャンス)と言わんばかりに、ベッドに忍び込む。しばしヌェーヴェルの寝顔を眺め、さらりと垂れ下がる前髪をそっと指で持ち上げた。  月明かりで影を落とす程長いまつ毛や薄桃色の薄い唇、稀に見る端整な顔立ちだ。ノーヴァは、吸い込まれるように瞼にキスをした。 「んん····」  ヌェーヴェルが目を覚ます。ノーヴァは弛んだ口角をきゅっと引き締めた。 「やぁ、ヌェーヴェル」 「ん····、なんだノーヴァか。······寝ろ」  寝ぼけたヌェーヴェルにギュッと抱き締められる。小気味よく背中をトントンと叩かれ、完全に寝かしつけの体勢に入られた。ウトウトと瞼が落ちてゆくノーヴァ。  ハッと気づく。添い寝をしに来たのではない事に。ましてや、寝かしつけられるなど言語道断。子供扱いの極みではないか、と。  ノーヴァは重くなったヌェーヴェルの腕を退かし、布団へと潜り込む。ズッと履物を下ろし、ヌェーヴェルのモノを咥える。 「······んっ····はぅんっ!?」  ヌェーヴェルは快感に驚き、しっかりと目を覚ました。毛布を投げ飛ばす勢いで捲り、自分のブツを咥え込むノーヴァを凝視した。 「おっ、おまっ、お前! 何シてんだよ!? 寝込みを襲うとか····バカっ! んぅっ····やめっ」 「····うぅひゃい(うるさい)」 「咥えながら喋るな! あっ、やめろって、ノーヴァ····」 「ひっひぇひぃほ(イッていいよ)」  軽々とイかされてしまったヌェーヴェルは、落ち込んでシーツに包まってしまった。 ***  どういう状況なんだ。何故ノーヴァに犯されてるんだ。て言うか、なんで大人の姿なんだよ····。 「そうだ、なんでお前大人になってんだよ。禁止しただろ? しかも、なんで女なんだ?」  よく見ると、豊満な身軀を包むのは異様に布面積の少ない下着と、透けっ透けのなんだ····なんか厭らしいのを着ている。もはやそれは、衣服としての意味など持たない。  これだけ風貌が違うのに、顔がそのままで女に見えるというのは不思議なものだ。元々綺麗な顔立ちをしているのだから、当然と言えば当然なのだが。  それにしても、身体が女のものだと絶世の美女だ。が、俺から言わせれば違和感しかない。男の姿をよく知っていて、その良さまで知っているのだから致し方ない。 「こっちのほうが喜ぶのかなって思ったんだよ。男に興味無いとか言ってたらしいし。それに、昔の約束なんて知らない」 「····知ってんじゃねぇかよ。はぁー······お前さ、何考えてんの? 何がしたいんだ? 俺の尊厳イジめんじゃねぇよ····」 「ふーん······ヴェルって童貞だよね?」  俺の顔をまじまじと見つめ、放った一言がコレ。何なんだコイツは。何でどいつもこいつも、デリカシーの欠片も無いんだ。ドーテー? 「なっ、なんで知ってるんだよ!?」 「わぁ、本当に童貞だったの? ウケる」 「····出てけ」 「はぁ?」 「出てけよっ!! どうせ俺は童貞だよ! 顔が好きだの、顔と中身のギャップだの、金目当てだのってロクな女がいねーんだからしょうがねぇだろ! 俺だってさっさと卒業してぇよ! でもそんなの好きな女とヤリてぇだろ! 童貞が何だよ、悪いのかよ!?」  あぁ、盛大に暴露してしまった。終わった。絶対に笑われる。もういっそ殺してくれ····。 「じゃあ、ボクで卒業していいよ」 「············はぁ?」  頬を赤らめたノーヴァが戯言を言った。笑われるどころか、憐れまれているのだろうか? 「お前、馬鹿にしてんのか?」 「してないよ。ボクじゃ不満なの?」  ノーヴァは身体をモジモジさせながら、俯き加減で続ける。 「別に、お前の気持ちなんてどうでもいいけどね。初めての相手がボクだなんて、光栄に思いなよ」 「お前、自分が何言ってるか本当にわかってんのか?」 「······わかってるよ」 「そうかよ。そうですかよ。わかった。ありがたく喰われてやるよ。いや、喰ってやる、か?」 「ごちゃごちゃとよく喋るなぁ。少し黙って····」  そう言って、ノーヴァは俺の口を塞いだ。いつものガツガツと首筋に齧り付いてくるアレではなく、甘く舌を絡める優しいキス。  呼吸のために一度離れ、ノーヴァは潤んだ瞳で俺を見つめる。俺は、その瞳に宿る熱に昂ったのか、はしたなく跨っていたノーヴァを組み伏した。 「わぁっ! 何すんの!? ヴェル····なんでそんな男みたいな顔してんのさ」 「阿呆か。俺は男だ。なんでもいいけど、せめて男に戻れよ。その姿だと、違和感しかなくて勃たねぇ····」 「えっ····。お尻に挿れられるのは嫌だなぁ。て言うか、こんな美女相手に勃たないとか、約立たずなの?」 「お前、本当にムカつくな。····そうだよ、勃たねぇんだよ。いつものお前がいい」  俺は何を言っているのだろう。男の姿がいいとか、男が好きだって言っているようなものじゃないか。そうじゃないのだが、他に何と言えばいいんだ。  とにかく、悪いのはノーヴァだ。きっと、他の女相手なら勃つはずなのに。 「なっ! ばっ、バカじゃないの!? まぁ、そこまで言うなら戻ってあげてもいいけど。痛くしないでよ」 「ドーテーには難しいかもな。けど、精一杯優しくしてやるよ」 「痛くしたら、干からびるまで血を啜ってやるからね 。戻るから一旦離れて」  ノーヴァは、紅潮した頬が愛らしい美少年に戻った。改めてノーヴァに覆い被さる。そして、再び唇が触れる寸前、ノーヴァがピタリと止まり扉の方を見た。

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