ノウェルの間抜けな微笑みを見て、初めてこいつに心臓が跳ねた。抱き締めたいと思った。これは、俺がこいつに恋をしているからなのか。本当に、バカ2人とノウェルを想っているというのだろうか。 　到底認めたくはないが、症状がノウェルの定義した“恋”に当てはまる。これは由々しき事態だ。性別どころか人数まで、俺はどこまでいい加減で不誠実なのだ。 　こいつらに心を奪われる事など、有り得ないと確信していた。だからこそ、今まで真剣に考えてこなかった。恋などというものを、まさか自分ができるとも思っていなかった。憧れだけを残して政略結婚をするのだろうと踏んでいたのだから。 　こんなにも自由に想う事ができたなんて、正直戸惑いを隠せない。しかし、ようやく向き合う決心をしたのだ。これまでの凝り固まった考えなど捨て、柔軟にこいつらと向き合いたい。だが····。 「俺は、お前の定義でいくとマズいんだ。ノウェルだけじゃなくて、ヴァニルとノーヴァにも恋をしている事になる。こんな不誠実なものが恋なわけないだろう」 「全部恋でいいんだよ。君は、僕達それぞれを想ってしまった。それだけの事さ。いずれ、僕を選んでくれればそれでいいんだよ」 「そんなの····選べるかわかんねぇ··から、約束なんてできないぞ」 「今はそれでもいい。君の心が僅かでも、僕に向いてくれているのなら」 　ノウェルは優しいキスをする。ノーヴァとヴァニルは滅多にしない、唇を重ねるだけのキス。こんなにも心地良いものなのか。 「ノウェル、もう挿れていいぞ」 「僕のが欲しいかい？」 「そんな事聞くなよ」 「聞きたいんだ。君が僕を求めてくれるなんて、これまで想像できなかったから」 　物悲しそうな顔で言われると、俺が悪い事をしていたみたいじゃないか。 「······ほ、欲しいよ。お前のを挿れてほしい」 　なんなんだ、これは。こんなに心臓が煩くなるセックスは初めてだ。 「けど待て。し、心臓が····その、跳ねすぎて苦しいんだ。何かの発作かもしれん。屋敷に──」 　ノウェルが俺の口を塞ぐ。そのまま甘く舌を絡め、苦しくないキスを教えてくれた。 「ヌェーヴェル、それはね、僕にトキメいているからだよ。僕を好いてくれている証拠さ」 「トキメ······は？」 「はぁ····君が女性の心を掴めないのはそういう所だよ。女心を知ろうともしないだろう」 「なっ、女心ってなんだよ。俺が接近すれば誰だって顔を赤くしてたぞ」 「それは単純に、君の顔が良すぎるからだよ。でもまぁ、現に乙女心を体験したし、もうわかるよね？」 「体験····？ はっ！ トキメかされた····これが女心か······」 「あはは。そうだと思うよ。さぁヌェーヴェル、そろそろ黙ってね」 　ノウェルは俺の唇に人差し指をそっと添え、いつもとは逆さまな扱いで黙らされた。そして、ちんこを入り口に馴染ませると、俺の反応を見ながらゆっくり挿入した。 「んぁっ····前立腺、ゆっくり擦るな····」 「これ、気持ちイイね。あ～ほら、どんどん溢れてくる」 「勝手に出るんだから、しょうがないだろ。あぁっ！ 待て、奥はダメだ」 「すまない、痛かったかい？」 「違う····すぐに、その、イッてしまうから····」 「そうか、痛くないのなら良かった。奥、もう少し解してから貫いてあげるからね」 「ひあっ、やめろって！ 本当に、止まらなくなるからぁっ」 　ノウェルは予告通り、奥をグリグリとちんこの先で解すと、一息に差し貫いた。 「んあﾞぁﾞぁﾞぁぁ!! やっ、ああぁっ····ダメだ、やめっ、止まんねぇ····」 　潮を噴くのが止まらなくなり、ベッドも俺達もぐしょぐしょになってしまった。非常に気持ち悪い。これは何度やらかしても慣れない。 　なのに、ノウェルは嬉々として奥を抉り続ける。 「ヌェーヴェル、後ろから突きたい。そのまま体勢を変えられるかい？」 　なんて聞きながら、強引に足を持ち上げて半回転させる。俺はへばりながら、腕で支えてなんとか身体を捻じる。 「お前の事だから····、俺の顔を見ながら··ヤりたがると··思ってた」 「よく分かっているね。君の顔が見られないのはとても残念だけど、僕も一度やってみたかったんだよ」 「な、何をする気なんだ？」 「ヌェーヴェル、気をしっかりもっててね。もっと奥まで、君とひとつになるよ」 　そう言うと、ノウェルは先程よりもさらに奥へとねじ込み、そこで長い射精の準備へと入った。 「んおﾞぁﾞぁﾞぁぁっっ!!! ひゃっ、いﾞあﾞっ、待ﾞっ、ぅぐぅﾞぅぁぁぁ!! 深い!! 深しゅぎる····も、むぃら····ノウェ、んﾞっ、おﾞえﾞぇﾞぇっ、えﾞぁっ、ふぅっ、んぇﾞぇﾞぇﾞ」 「あぁ～～～っ、ヌェーヴェル！ 可愛い。僕に貫かれて苦しそうに吐いて、それでもなおイキ続けてるんだね。ヌェーヴェル、愛してる。たとえ君が誰を選ぼうと、僕は君を愛しているよ」 「待て、それ以上、入らなっいﾞあﾞぁぁ!! ぅﾞぶっ、えﾞぇﾞぇぇ····も、ムリ、苦し····ノウェ、落ち着け」 「ごめんよ、ヌェーヴェル。腰が、止まらないんだ。君のナカが良すぎて、もっと奥まで入りたい。全部挿れて良いかい？」 「はっ、はぁ!!? まだ、じぇんぶじゃ、なかったのか!? 無理ら、もう、入らない。腹が裂ける！」 「大丈夫。君を壊したりなんかしないさ。存外、お腹は丈夫だよ」 　ノウェルは、俺の腹越しにちんこを握り、さらに刺激を強めた。 「そぇやめﾞろ····んぐっ····腹、空っぽなのに、吐きそ····」 「ここよりもっと、ヌェーヴェルのナカに入るからね。ほら、お尻拡げてて」 　ノウェルは俺の手を尻に持ってくると自分でケツを開かされた。ノウェルを受け入れる体勢が、完璧に整ってしまったじゃないか。 「いくよ。根元まで全部挿れるよ。最奥で僕を受け止めて。はぁ····愛してるよ、ヌェーヴェル」 「ひぎぃﾞっあﾞぁﾞぁあﾞあﾞぁ!!! らめっ、腹裂けるっ!! やらぁっ、腹あちゅい！ ノウェルの精子あづいぃぃっ!!!」 「んくっ····そんなに可愛いと、射精が止まらないじゃないか····」 「バカッ!! どんらけ出すんらっ！ あﾞぁﾞぁﾞ～～っ、噴くのっ、止まんにぇぇぇ」 「ンッ、あぁっ····このままもう1回いいかい？」 　と言いながら、もう腰を振っているじゃないか。 「ひぃっ、いいわけねぇだろ！ ぬ、抜けってぇ····」 　その後も、ノウェルは欲望のままに俺を犯し尽くした。性欲で言うと、ノーヴァとヴァニルの間くらいだ。 　俺は失神を繰り返し、気がつくと窓から朝陽が差し込んでいた。 　「ノウェ····もう、朝ら····いつまでヤッてんら······」 「本当だ····。すまない、君に夢中になりすぎていた。これで最後にするからね」 「嘘らろ····まだヤんのか····」 「大丈夫、もうイクから」 「へぁﾞっ、も、かはっ、声出ねぇ··って····んぁﾞっ····ケツ、イﾞッあﾞぁﾞぁぁ」 　こうして、ノウェルとの長い一夜が明けた。俺たちは仮眠をとり、再びノウェルに抱きかかえてもらって屋敷に飛んで帰った。 　俺の部屋にはヴァニルが居て、ノウェルとの朝帰りを見られてしまった。 「どういう事ですか？ 朝帰りなんて、いいご身分ですね」 「な、なんで俺の部屋に居るんだよ」 「夕べ、貴方を傷つけてしまった事を詫びに来たんですよ。そうしたら、ベッドはもぬけの殻。窓が開いていたので、もしやとは思いましたが······」 　何だ、この浮気現場を見られたような修羅場感は。元はと言えば、ヴァニルとノーヴァが俺の心を掻き乱したのが原因じゃないか。 「なんでお前にキレられねぇといけないんだよ。俺が誰と何処に行こうが、俺の勝手だろ」 「はぁ～····。そうですか。そういう事を言うんですね」 「ヴァニル、落ち着け。夕べ、ヌェーヴェルは本当に傷ついていたんだ。それで、静かな所に行きたいと言うから、丁度訪ねてきた僕に頼っただけなんだ」 「おい、ノウェル。そんな言い訳じみた事を言うな」 「言い訳って、事実じゃないか」 「それでも何か悔しいだろ！ もっとこいつを妬かせてやりたい」 「ヌェーヴェル、子供みたいな事を言っている自覚はあるかい？ それに、そんな事をしてまた抱き潰されるのは君だよ？」 　ノウェルに言われ、俺はハッとした。頭に血が上り、ヴァニルを煽る事しか考えていなかった。 「貴方、本当に阿呆ですか。····わかりました。お望み通り犯し殺してあげますよ。今は精力が尽きているようなので、今晩、覚悟していてくださいね。ノウェルも、イェールを連れて来るといいですよ。可愛いヌェーヴェルを沢山見せてあげます」 　ヴァニルはそう言うと、部屋を出て言った。 「お前、今夜も来る気だろう」 「え、まぁ、可愛いヌェーヴェルを見逃すのは····ねぇ」 「イェールも連れて来るのか？」 「ヴァニルがそう言って······嫌なのかい？」 「アイツは俺を敵視してるんだ。来なくてもいい」 「はぁ～ん····。わかった。連れて来るよ。僕が君の目の前で犯されているところを見て、君は君の心と語り合ってくれればいい」 　ノウェルが、日に日にヴァニルに似てきている。少し方向性は違うが、変態ぶりが増している気がする。俺の前では、本性を隠さなくなった所為だろうか。しかし、こいつも手に終えそうになくなってきたのが厄介だ。 　今夜、また瀕死になるまで犯されるのだろうか。憂鬱なのに、この心臓の高鳴りが腹立たしい。 　致し方ない、早めに仕事を済ませておこう。