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第7話
不意に壁時計を見たら20時過ぎてる。
「もうさ。泊まったら?こっからだと4時間どころか5時間は掛かるだろうし。駅までの時間、考えたらさ」
わかりやすく笑顔になり飛び跳ねるんじゃないか、てくらいの喜びよう。
なんっか、こういうとことか度々、そこら辺の女より女っぽいな。
宅飲みで料理作ろうか、て提案してきた時も感じたけど。
「助かるー!ありがとう!明日バイトだから、て、昼過ぎから、なんだけど」
「バイト?ゲイビの男優とか?」
またもや、蓮は酎ハイを吹いた。
「きったねーな」
「僕を一体、なんだと思ってんの!?店員だよ、店員!ゲーセンの!」
プンスカしてる蓮に苦笑い。
反応、面白いな、こいつ。
「ゲーセンねえ」
「凄いんだからね!僕!スーパー店員なの!」
「...スーパーの店員?」
思わず、眉を顰めた。
「ちっがうー!超優秀!優しい店員さんなの!」
「自分で言う?それ」
ごくん、と喉を鳴らし、酎ハイを飲み干してから。
「僕が出勤の時はね!UFOキャッチャーの景品、全て取りやすいように配置変えてるの!」
今度は俺が飲んでいたハイボールを吹いた。
「は、配置を変えてんの?全部?」
「うん!クレーン式の奴はだけど、全部!だから、みんな簡単に取れちゃうの!」
「そ、それ、大丈夫なの?」
んー、と蓮は酎ハイ片手に宙をぼんやり仰いでる。
「いいんじゃない?みんな笑顔で帰ってくし」
...赤字にならないか、て心配だったんだが...
でも、少し蓮を見る目が変わった。
みんなが笑顔になって欲しい、と、もしかしたら、他の店員にバレないよう、コソコソ商品の配置を変えてやってる、て....普通にいい奴だよな....。
だいぶ互いに酒も飲み、出来上がって来ている。
にしても良く笑うし、表情、豊かだよなー。
玉子焼きの皿も、
「結構、あっという間だったね」
さりげなくキッチンのシンクに運んで、
「明日洗うねー」
なんて、今までの女ですらしなかった気遣い。
じ、とピーチクパーチク喋ってる蓮の横顔を眺めてた。
「...なに」
と、同時に押し倒した。
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