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意外と気遣い上手
酔っ払って破廉恥な事して怒らせもしたが、暫くしたら、蓮は忘れた。
都合のいい脳みそだな。
「明日、着てく服、借りてい?」
と聞かれ、いいよ、と答えた。
それぞれ、シャワーを浴び、いざ就寝、となると、蓮はソファで寝ようと準備してる。
「明日、バイトだろ?体、痛めるぞ。こっち来たら」
「え?でも...」
「なに」
言いづらそうに背中を向け、
「...だって犯されそう」
とボソッと言い、吹いた。
「俺が乳首見たから、て、なに?警戒してんの?」
「そ、そりゃ、ちょっと...」
「ただの悪ふざけだよ。俺、おっぱいおっきい女の子が大好きだし」
「....それもどうかと思うけど....」
恨めしそうに肩越しに俺を振り返った。
男と同じベッドで寝るのは別に初めて、て訳じゃーないし。
寝る場所がなく、仕方なく一緒に寝たりはあった。
蓮が、
「お、お邪魔します」
いそいそと俺のベッドに入ってくると、その緊張が俺にまで伝わる。
「じゃ、おやすみね、蓮」
「....うん、おやすみ、孝介」
そうして、部屋の明かりを落とし、瞼を閉じた。
暫くすると、すー、すー、と定期的な蓮の寝息。
蓮の寝顔、元々、猛々しい男、て訳じゃないし、素直に可愛いな、と思えるレベルだった。
ま、それ以上は特にない。
不意に、蓮が小さく鼻を啜った。
「だいち....」
ああ...元彼の夢でも見てんのか...別れたばっかだしな...。
元気ぶってても、やっぱり傷ついてたのかもな...。
唇を噛み締め眠る、蓮の頭を優しく撫でた。
そして...。
「あ!起きた!?孝介」
部屋中に籠る匂いに目を覚ました。
「....おはよ、蓮」
よたよたと体を起こし、リビングに向かう。
「朝食、出来てるよ?食べる?」
テーブルにはベーコンエッグにクルソン。
「トースト焼くねー」
「買い行ったの?食材」
「え?うん、て、そこのコンビニだから大したの作れなかったけど」
笑いながら蓮は手際よくトーストをトースターに入れ、お湯を沸かしてる。
「はい、出来たっ」
ワンプレートにトーストが乗り、マグカップのポタージュとホットコーヒー、ペットボトルのミネラルウォーターが並んでる。
「....凄いな」
「え、お粗末な料理でごめんだけど」
痒いところに手が届く、てこんな感じかも...。
俺はゲイではないが、もし俺がゲイなら別れたりしないだろうに。
なんであの元彼、こいつを簡単に手放したんだろうな...。
「はい、マヨネーズ。もう無くなりそうだから新しいの買っといた」
笑顔で真新しいマヨネーズを渡され、ベーコンエッグの上に捻った。
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