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第10話

蓮を送り出した後はなんだか寂しいもんだ。 服を貸したから、連絡先の交換はした。 蓮とは違い、バイトもしてはないし、今日も大学ではないし。 「....昨日、行けなかった服、見に行くか」 シャワーを浴び、着替えを終えて、駅へと向かう。 途中、友人からの電話で話し込み、電車を降りる。 あー、これ、蓮に似合いそ、てなトップスがあった。 朝食まで作ってくれてたし、朝っぱらからコンビニに買い出しまでして。 プレゼントしたっていいか。 自分のぶんの服に交え、蓮の服も一着、購入。 昼はラーメン屋に並んで食べた。 テキトーに彷徨いてたら、着信音。 見ると、今度は蓮だ。 イヤフォンをしたまま、電話に出ると、これまた元気な蓮がいた。 「あ!孝介?今日さ、なんか予定ある?」 「今日?特にないけど」 「じゃーさー、夜、一緒しない?」 「....夜?」 「夜ご飯!」 「なんで?」 「そっれがねー!」 こっから、蓮のマシンガントーク。 「女友達がバイト先に来たわけ!でさ、これ、貰ったから、あげる!てなんだと思うー!?三秒以内に答えよ!」 「さ、三秒?」 あまりの勢いにたじろぐ俺。 「そ!三秒!でさ、焼肉の半額券、二枚貰っちゃった訳!相談に乗ってくれたお礼だとかでー。で、一人焼肉、二回行けるじゃーん!てよく見たらさ、一枚につき、二名様以上からしか使えないんだよー!!!」 「....それで仕方なく俺を誘った、と?」 思わず苦笑い。 「あ、いや、友達だとさー、みんなをみんなは誘えないから、誘えない子に悪いからさー、孝介がOKなら、て」 「俺が駄目なら元彼、誘うとか?」 「なわけー!てか、ひっどいよね!あの後、ぜーんぜん、連絡ないの!ごめん、とかさー、僕、それだけ!?て感じー」 「ふーん。でも焼肉、半額はいいな」 「でしょ!?僕、バイト16時に終わるからー」 「あ、なら、その頃、バイト先に行くわ。今、服、見に来て彷徨いてたし」 「あ、そーなんだー、いいなあ!じゃ、後でね!」 「ああ」 バイトが終わる少し前には蓮のバイト先のゲーセンに着いた。 濃い水色のシャツにベージュのスラックスの制服姿の蓮はUFOキャッチャーに毅然と立ち向かう、小学生くらいの男の子の後ろにピッタリ着いている。 「あ、も少し、右、右、ゆっくりね。あ、そこら辺で離して」 見事、少年が狙っていたらしいぬいぐるみが下に落ちてきた。 「おめでとう!良かったね!」 満面な笑顔でぬいぐるみを少年に手渡し、少年も嬉しそう。 「お母さんとこ戻るね!ありがとう、お兄ちゃん」 「どういたしまして!ぬいぐるみ、取れたよ、て見せてあげてね。僕がアドバイスしたのは内緒にしてね」 少年の背に合わせて屈み、口元に人差し指を当てて話してる。 「え、なんで?」 「なんででも。また来てね!」 「うん!」 ヒラヒラと互いに笑顔で手を振り合う姿を遠巻きに見ていた。 その蓮の優しさと純粋さに胸がざわついた。

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