12 / 29
焼肉!
カルビにロース、着々と蓮が焼いていく。
「ん」
蓮からトングを取り上げた。
「あ!焼いてる最中だったのに!」
「焼肉奉行かよ、お前は。焼いてないで食え、ほら」
蓮の皿に肉を二切れ乗せた。
「じゃ、お言葉に甘えて...ん~~~!」
いちいち頬っぺたを抑える姿に思わず笑う。
「ほらほら!孝介も食べなよ!」
俺もカルビをパク。
「んまいなあ」
「聡美に感謝だなあ」
「聡美、て子に貰ったの?券」
「うん、そう...・ 。 あ!」
肉を箸で持ち上げながら。
「なに」
「紹介しないからね!」
「別に構わないけど」
「....胸、おっきいよ?」
「んー、今は焼肉の事しか考えられない」
俺を見つめたまま、口元を抑えて、ぷ、と笑った。
「...なに」
「や、もしさ、告られてさ、ごめん、焼肉の事しか考えれない、て言われたら、ぽっかーん、てなりそう」
俺も肉にタレを付け、手元を見たまま、
「だな、焼肉に負けたの、てなるな」
「焼肉に負けたんだー、て傷ついたりはしないだろうねー」
そう言って、ロースを蓮が頬張った。
その姿を暫し見つめた。
「....傷ついたの、蓮は」
「んー?なにがー?」
「あー、だから、こないだ、さ」
蓮が少し動揺したのがわかった。
「あ、あれか。ぜーんぜん!僕の事、ちっとも信用してないんだもん!スッキリしたー、別れて!」
そう言うとレモンサワーを煽る。
泣いてた癖に...寝ているのに、大地、て奴を思い出しながら泣いて。
「....あんま、無理すんなよ」
「なにが。ってか、野菜も焼こ!?肉ばっかだと偏る!栄養!」
トングでピーマンや玉ねぎ、人参を並べ出した。
「俺、ビール、お代わりするかな、お前は?」
「え、あ、なんにしよ」
メニューを見ながら、一通り、サワーや酎ハイを口にする。
「青りんご!青りんごがいい!あと、白ご飯も欲しいかも!」
「良く食うな、お前」
「焼肉、食べてたら白米、欲しくなるじゃん!一、二杯で充分だけど」
壁際にあるチャイムを押した。
ともだちにシェアしよう!