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第13話
「あー!美味しかったー!お腹いっぱい!」
「だな、美味かった」
「幸せすぎて死んでもいい!」
「や、死ぬなよ」
「例えだよ、例え!それに孝介の服も洗って返さなきゃだしー」
服を鼻先まで引っ張り、
「うっわ。焼肉くさ」
思わず苦笑した。
「そりゃ、俺も同じ。じゃ、またな」
「うん、気をつけて帰ってね!」
「それ、俺のセリフ」
「服、返すとき、連絡する。あ!服、ありがと!帰ってから楽しみ!」
ビニール袋を掲げ、少し照れた明るい笑顔。
そうしてその日は二人で焼肉を満喫した。
次の日には、
「服、いつ返そうかー?あと服、ありがとう!めっちゃいい感じ」
「気に入った?」
「うん!かなり!」
再会したのはそれから3日後。
初対面の時と違うカフェ。
先に着いていたらしい蓮が、
「こっちこっち!孝介」
と明るく手を振っていた。
俺があげた、ブルーに一部、白が入ったTシャツと淡いブルーのデニム。
「似合ってるじゃん」
向かいに座りながら声を掛けると、エヘ、と人差し指で頭をかき、照れ笑い。
ふと、テーブルを見ると水しかない。
「なんも頼んでないの?待ってるとこか?」
「あー、違う。孝介が来てから頼もうと思って」
にこ、と笑い掛けてくる。
....なんだろうな。ゲイでもないのに、蓮が愛おしいと思う俺がいる。
「すみませーん!」
変わらず、でっかい声出し、手を挙げ、ウェイトレスを呼ぶ様に笑いそうになる。
子供みたいだなあ。
「孝介、なんにする?」
自分より先に俺か。
「アイスコーヒー。お前は?」
「僕はレモンティー」
「アイスコーヒーとレモンティー、ですね。少々、お待ちくださいませ」
ウェイトレスが会釈し、去っていく姿を見つめる。
「こないだ、美味しかったねー!焼肉!」
「だな。今日も行く?」
向かいの蓮が目を丸くした。
「え、なんで?」
「や、美味しかっただろ?」
「美味しかったけど...もう、券ないよ?」
「別に俺が出すし」
「わ、悪いし!て、バイトしてないのに...実家、お金持ち?」
運ばれてきたアイスコーヒーを啜る。
「普通だよ」
「うっそだー。部屋も広くて綺麗だったし、やっぱりお金持ちなんだー」
レモンティーにガムシロを落とし、くるくるとストローで掻き回しながら感嘆な声。
「でも、今日はいいかな。たまに食べるから美味しいんであってー」
そして、ストローでレモンティーを啜ってる。
「だったらどうする?カラオケ?」
蓮が動きを止め、ストローを咥えたままなんで、上目遣いで俺を見る。
「...カラオケ、嫌いなんじゃないっけ?」
「お前は好きなんだろ?」
「そう、だけど...」
困惑しているのか、ストローでレモンティー、掻き回し、カラカラと氷が音を立てた。
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