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お弁当

「あ!そうだ!」 蓮が唐突に声を張った。 「どうした」 「今日、大学?」 「ああ。まあ、午後からだけど」 「お昼はどうするの?」 「お昼は...て昼飯か?大体、大学の傍の店か食堂とかコンビニで...てお前はおかんか」 「んー、よし!お弁当箱、僕のがあるし、ささっと作っちゃお!」 「べ、弁当?いや、いらん」 「お弁当の方が栄養も採れるし安上がりだし。浮いたぶん、貯金したり遊べるじゃん?それに孝介の胃袋を掴まえないとだし!」 お互い、大学は違うし、1人で昼飯になるかどうかもまだわからない、友人と一緒になれば確実に冷やかされるだろう...。 ...そもそも、とっくに胃袋は掴まれてる感があるし、胃袋だけじゃないな、心臓とか脳みそ、眼球なんかも...? 見てたら飽きないしな、蓮、て。 ...ていうか。ダンボールから取り出した二つの弁当箱に釘付けになった。 「...まさかその弁当箱を持っていけと?」 「うん!可愛いでしょ!」 キッチンに立つ蓮が振りまきざまに微笑んだ。 「どっちがいー?リラックスしてるクマさんとー、ぐでぐでした玉子さん」 ...どちらもファンシー過ぎやしないか。 「...どっちでもいいよ」 「わかった!急いで作るから待っててね!あ、朝ごはんは?食べた?」 「...や、だから...お前はおかんか。食べたよ、トースト」 蓮がぽかんとなった。 「え?トーストだけじゃないよね?」 「うん、まあ。コーヒーとトーストだけど?あ、マーガリンは塗った」 「うっわ!足りるの?それ。栄養もだけど、お腹」 「まあ、大学着いたらコンビニ寄るか、て感じだったしな」 うーん、と蓮が唸る。 「...早弁用とお昼用が必要...?あとはタッパーしかないしなあ...」 またもやダンボールをガサゴソし出した。 「いや、もはや、タッパーでいいよ、昼も」 「あ!そうだ!アルミホイルを使お!」 「無視かよ」 先日購入してやった、キャラクター違いではあるがファンシーなクマさんがプリントされたエプロンを着けた蓮が料理を開始。 次第に...いい匂いがしてきた。 「....腹減ってきたな」 「あ、軽く食べる?お弁当作りのついで」 ちゃっちゃと手際もよくセンスもあるのは案外、蓮は美術部だからなのかもな...。 なんてことを考えながら、余っていたトーストで作ってくれたフレンチトーストを食べた。 「...う、まっ...」 「そ?良かったー!色々スーパーで買い込んできてて。牛乳と玉子や砂糖とかに漬けて焼いただけだよ。メイプルシロップ掛けるなら自宅から持ってきたから。要るならダンボールにあるよ」 「や、充分美味いし」 友人たちに冷やかされるのは嫌だが、蓮の弁当が楽しみだな、と思う俺もいる。 にこにこと微笑んで鼻歌歌いながら料理してる姿を眺め、癒される俺も居たけども。

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