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第31話

「大学でも女どもに囲まれて話しかけようもねーわ、LINEもブロックするから知り合い通じて連絡してもシカトだわ、なんなんだよ、お前!」 「ちょっ、やめてよ、こんなとこで!」 それでなくても孝介もいるってのに...。 不安に思いながら孝介を見ると、唐突に孝介が大地に微笑んだ。 「お久しぶりです、先輩」 にこにこと僕も見たことがない大地に向けられた孝介の笑顔...。 「...え?お、おう」 ....大地ときたら、眉根を寄せ孝介を見て、後輩を思い出せない、誰だったっけ、て思案しているようだ。 「確かに。こんなところじゃなんですよね、ちょっと待ってくださいね」 そうして孝介はスマホを取り出し何処かに電話をし始めた。 「あー、すみません、類さん。おはようございます」 『....おはようございます?夕方だけど。なに?なんかあった?』 相手の声が若干、聞こえてきた。知らない男性...。 「すみませんけど、ちょっと店開けて貰えません?」 『どうかした?まだ開店まで時間あるんだけど』 「まあ、シャンパンの二、三本入れますんで」 『...なんか問題発生?まあいいや、わかった。とりあえずゆっくり向かってくれる?準備するし』 「ありがとうございます、助かります」 通話を終えた孝介は、 「じゃ、向かいましょうか」 大地も連れ、タクシーに乗り込んだ。 着いた先は少し離れた先にあった見ず知らずのシンプルなレストランみたいなBarみたいな...。 「ああ!いらっしゃい。ちょっと待ってね、今開けるから」 両手にビニール袋を下げたその店の店員らしき長身で細身な男性が背後から駆け寄ってきた。 30代くらいだろうか、茶色く染まった無造作にセットされた髪、色白な肌、大人の色香を漂わせたイケメン。 「....孝介の知り合いの店?」 「いや、去年かな、オープンしたばかりの頃、偶然、通りかかって。酒も料理もリーズナブルだけど美味いからたまに来てた。さっきのは店長かつ代表の類さん、て言うんだ。結構、聞き上手な感じでさ、いい人だよ。イタリアで昔、修行してたとか」 「へー!イタリアン!?気になる!」 つい大地放ったらかしで舞い上がってしまう。 「はい、どうぞ。まだオープン前だけど特別ね」 そう言って店へ招き入れてくれた類さんに軽く頭を下げ、カウンターに僕、隣に孝介、その隣に大地が並んで座る。 「とりあえず、類さんおすすめでなんかテキトーにあとシャンパン」 「んー?予算とかは?」 「や、特には。なんか食べたいもんある?蓮」 メニューを見てみるもよくわからないので、唸りながら首を捻る僕...。 「好きな物や嫌いな物とかは?」 類さんに尋ねられた。 モデルさんみたいに美形だなあ、と見蕩れてしまう...。 「や、特にないです...」 「了解」 にこ、とカウンターの中の類さんが愛想のいい笑顔をくれた。 早速、孝介はシャンパン...といっても、類さん曰く、せっかくだから、とイタリアのスパークリングワインはスプマンテ、て言うらしいけど、プロセッコ、ていうらしいボトルを空けた。 「とりあえず乾杯、てことで」 孝介の一声で僕たち四人はグラスを合わせた。
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