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第32話

スパークリングワインやシャンパンとかよくわからない...そんな僕を察してか、 「フルーティでそこまで度数も高くないから飲みやすいと思うよ」 一番左側に僕、右に孝介、その右側に大地という並びなだけに類さんは僕にそう優しく声を掛けてくれた。 「あ、ホントだ...」 「ちょっとりんごみたいな風味でしょ」 うんうん、と頷いていると、そこまで僕と歳が変わらないだろう小柄で細身の二人の従業員らしき男の子がやってきた。 光くんと晶くん、ていうらしい。 ....なんとなく雰囲気からお仲間な感じがする、なんて気のせいかもだけど。 光くんはにこにこと愛嬌があり、大地の空いたグラスにシャンパン注いでる。 晶くんは笑えば可愛い感じだろうに殆ど無表情。 「あ、その...開店前なのにすみません」 晶くんに話しかけてみたら、きょとんとされた。 「あー、気にしないで。晶は単なるツンデレのツンだから」 類さんのフォローに思わず苦笑い。 「うーん、ていうか。蓮くんだっけ」 カウンターから類さんに話しかけられ、はい、と答える。 「お腹は?空いてない?前菜みたいなのばっかだし」 晶くんのおすすめでパエリア、タラとあさりのアクアパッツァ風、バーニャカウダ、孝介が好きらしいレバーペーストを塗ったクロスタータ、イカのイタリアン炒めを注文。 結局、僕はスパークリングワインを殆ど飲むことなく、孝介は光くんと一緒に大地に勧め、ついには二本目に突入。 「まだ思い出せないんすか、先輩」 「えーっ。悪い悪い」 「まあ、あの日は本当、迷惑だったんすけど。先輩のお陰もあるんで。まあ飲んでくださいよ、俺の奢りなんで」 どうやら孝介は大地に高い酒を奢ってやり恩に着せたついでに潰してしまおう作戦らしい。 「大地さん、て言うんですか?めっちゃイケメンですね。モテるでしょ」 光くんに煽てられ、大地、鼻の下伸ばしてる...。 と思ったら、 「いてっ!」 光くんがカウンター内で声を上げたかと思ったら隣にいる晶くんが光くんに睨みを利かせている。 こちら側からは見えないけどカウンター内で光くんは晶くんに脚を蹴られたか踏まれたみたい。 「デレデレしてないで仕事してくれる?光」 「ちゃんと仕事してるって」 なにやら光くんが晶くんの耳元に顔を寄せごにょごにょ言っていて、 「....ね?」 ああ、なるほど、と晶くんが拍子抜けしたように頷いた。 「大地さん!僕もご一緒にいいですか?」 シャンパングラスを手にした晶くんの可愛らしい笑顔に、 「ああ、もちろん」 大地が微笑んだ。 それを見ながら類さんが出してくれた美味しいイタリアンに舌鼓を打つ僕。 最終的に。 カウンターに突っ伏し大地はダウンした。 「あー寝ちゃった」 「寝ちゃったね」 光くんと晶くんが声を揃える。 「マフィが来たら奥に運んで貰おっか」 「奥?」 思わず顔を上げると、 「うん。奥にパーティルームがあってね、防音の。VIPルームみたいな感じだけど予約制でバースデーパーティなんかに使って貰ってるんだ」 類さんの説明になんだかほっとした。
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