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俺達の記念日②
パンフレットらしきものをテーブルに広げてなにやら上機嫌のはるが誰かと電話をしてる。
夕飯の片づけをしながら耳を大きく膨らませて盗み聞きしていた。
「そうなんだよ、エントリーしてたんだけど審査に通って出場することになってね」
どうやら先日から言っていたはるの大好きなヘアデザイナーさんが出るヘアショーの出場権を獲得したみたいだ。
念入りに仕込んでいたモデルの写真撮影を三軒隣の写真屋のお兄さんに頼むくらい力の入れようだった。
その権利を得て上機嫌なのはわかる。
でもさっきから聞こえる来週って言う言葉。
洗い物を終えてポケットから取り出しスマホをタップした。
ヘアショーの名前を打ち込み、現れた画面に固まる。
デカデカと『7月19日 20日』と書いてある。
19日は前夜祭で20日はヘアショー。
俺達の付き合い始めた日。7月20日。
別にカレンダーに書き込んでいるわけじゃない。だけどこんな大切な日を忘れるわけないはず。
毎年何かをプレゼントし合い、今年で8回目の記念日なんだ。
忘れてるはずがない。いや絶対覚えてる・・はず。
なのにご招待されるホテルを褒めたり、デザイナーさんを褒めちぎったりと話に華が咲いている。
段々不安になってはるの隣に座った。
視線だけ見せて可愛く笑う顔は堪らなく幸せになるけど、今回に限ってはそうじゃない。
テーブルの上のパンフレットを手に取ってパラパラとめくった。
はるがこんなに楽しみにしてるのはそうないから行かせてあげたい。
でも・・・俺達の記念日を忘れてるのは頂けない。
雰囲気を察したはるが電話を切った。
「あき?洗い物ごめんね・・・俺さ、これに行きたいんだけど、いい?」
いいも悪いも行く気満々じゃん。
確認を取ってくれるのは嬉しいけど、忘れてるわけじゃないよね?
「花巻さんと同じステージに立てるなんて夢見たいだ・・・」
瞳をキラキラさせてパンフレットを覗き込むその姿に溜息を吐き、憧れの人と俺達の記念日、天秤にかける俺の思考と度量のなさに溜息を吐いた。
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